「浩紀君、お願いがあるんだけど、良いかな?」
「え?何?」
「私ぃ、彼氏とぉ、ちょっと旅行に行きたいんだよねー。悪いんだけどぉー3日間だけ家のエンジェルにエサやっていて欲しいんだけどぉ…駄目かなぁ」
「あぁ、いいッスよ。3日くらいなら…」

浩紀はバイト仲間の亜紀(あき)から白い鳩を預かることにした。名前の通り、天使のような翼を持つ綺麗な鳩だった。

「パンドラにも見せてやろう。喜ぶかな?」

意気揚々として家路につく浩紀。

「いやぁぁぁぁぁ!」

出迎えたパンドラは血相を変えて悲鳴をあげて後退った。

「どうしたんだ、パンドラ?」
「来ないでぇ!あっち行って!!」

駆け寄ろうとする浩紀が近づくのを拒むパンドラ。

(鳩?この鳩を嫌がっているのか?)

浩紀は鳩を玄関に置いてからパンドラに近寄った。

「殺して…あれを殺して!」

鳩を指さし、殺すように言うパンドラ。

「駄目だよ、あれは預かりモノだから、殺せないよ。それに殺すなんて言わないでよ」
「じゃあ、返してきて…」
「…わかったよ。パンドラがそんなに言うなら返してくるよ…」

鳩を嫌がるとは思わなかった。

鳥が苦手なのかな?

そう考えることにした。

その時、パンドラの背中が崩れかけていたのだが、鳩を遠ざけたらすぐにもどったので、浩紀は気付かなかった。

パンドラはポロポロと不自然な行動を見せている。

でも、やはり浩紀は気付かない。

パンドラに対する危険意識が欠落していた。

その日の内に鳩は亜紀に返した。

亜紀は残念がっていたが、仕方がないと言ってくれた。

だが、またしても旅行先で亜紀は彼氏と共に車で転落死した。

まただ。

また、浩紀の知り合いが亡くなった。

そして、その度にパンドラは美しく、そして魔性の魅力を感じさせるようになっていった。