「今日は早く帰れるの?」
「…あぁ、講義が終わったらまっすぐ帰るよ…」
浩紀はパンドラとの同棲生活をはじめていた。
物置に放置されていた石棺はいつの間にか無くなっていた。
よく考えれば、パンドラには不自然な点が多すぎる。
だが、肉欲におぼれている浩紀にはそれを無かったことにしていた。
抱いても抱いても抱き足りない…。
出来れば一日中、一緒にいたい…。
そう、思っていた。
「今日、近所で爺さんが亡くなったみたいだな。葬儀屋みたいなのが来てたわ」
新聞配達のバイトで浩紀が新聞を配るとポストの前で、新聞を待っていた老人が変死していたことをパンドラに伝えた。
気分はもう夫婦だ。
「…そう。…それより、これ…」
「え?どうしたの?これ…」
浩紀は軽く驚いた。軽く100万くらいは入っている封筒があったからだ。
「…田舎の両親が仕送りしてくれたの…。お金、必要なんでしょ?使って…」
「え…もらえないよ、こんなに…」
「もらって欲しいの…私とあなたの仲じゃない…」
「パンドラ…」
暖めあう二人。
パンドラも自分を愛しているんだと思った。
パンドラにもらった100万円は全部は使わないで90万円は貯金に回した。
そして、毎月、1万円を食費に回すことにした。これで、大分楽になる。
バイトを一つ減らしても良いなと思った。
でも、二人の生活をもっと豊かにしたいから、少しはバイトをしなくてはならない。
「まだ、足りないの…?」
「いや、十分だよ。愛してるよ、パンドラ」
「私もよ…」
二人は今日も身体を重ねた。
「なんか、最近、知ってる人がよく亡くなるんだよなー…気持ち悪いよな…」
「…そんなことより…これ、見て」
「!どうしたの、これ?」
「時計でしょ?欲しかったんでしょ?」
「でも、これ、高いやつじゃん」
「…もらったの…」
「もらったの…って駄目だよ返してこよう」
「うそ。本当は拾ったの…」
「じゃあ、警察に…」
「…そう…」
パンドラの行動はどこかおかしい…。
まるで、行動の一つ一つを試しているようだった。
間違えるとウソだといって軌道修正しようとする。
それでも駄目だと押し黙る。
その繰り返しだった。
また、浩紀の周りでの亡くなる人の人数が異常と言って良いほど多かった。
今月に入って5人である。
だが、恋は盲目なのか、浩紀は気付かなかった。
いや、気付こうとしなかった。
「浩紀さん、あなたのお知り合い…全員知りたいな。あなたのことは何でも知りたいの…隠し事は無しにして…」
「全員か…ちょっと全員は難しいんじゃないかな?遠くにいる人だっているし…」
全員を教えると言うのは確かに無理な話だった。
知り合いぐらいならあちこちにいるし…人間である以上、人と支え合って生きていかないといけないから行動範囲が広がれば自然と知り合いも増えてくる…。
どんなに仲の良い夫婦だって人生で出会った知り合いを全員知っているかと聞かれれば全員が否と答えるのではないだろうか。