「浩紀ぃ、今日、お前んとこ行っていいか?宴会やろ、宴会!」
「大介(だいすけ)か?無理だよ、俺、金ねぇし、割り勘なんだろ?」
「部屋、貸してくれたらお前はただでいいよ!」
「マジで?じゃあ、オーケーだ。待ってるわー」
浩紀の友達の大介が、アパートに来ることになった。大介の彼女の郁美(いくみ)に亮太(りょうた)と可憐(かれん)、恵里香(えりか)も来るらしい。
苦学生仲間だった。
みんな地方からやってきてサークルに入って仲良くなった友達だった。
「じゃあ、一時間くらいで、あたしと大介、可憐と亮太が抜けるから、後は恵里香、上手くやってね~」
郁美は恵里香を浩紀をくっつけようと躍起になっていた。
「わかった。ありがと、郁美」
恵里香はずっと浩紀の事が好きだった。
だけど、浩紀には羽住がいたので、ちょっと尻込みしていた。
郁美達は奪っちゃえばいいとか言っていたが、恵里香は浩紀の性格はあんまり押しが強いとかえってどん引きされるとわかっていたから、きっかけがつかめないでいた。
だけど、羽住はもういない…
これは、チャンスと大介達を巻き込んでずっと練っていた計画を実行に移すことにしたのだ。
大介達はすでに酔っていた。
酔った勢いでという作戦だったからだ。
あらかじめ飲んで来たのだ。
「うぇ…、俺、吐きそ…」
「ちょっと、亮太、まだ、つぶれないでよ、これからなんだから…」
「そうだよ、大体、初っぱなから飲み過ぎなんだよ、お前は…」
「だって、しょうがねぇじゃん…俺、恵里香の事、好きだったんだから…」
「おいおい、だからって、邪魔しないでよ!」
「だれよ、こいつ誘ったのは…人選ミスじゃないの…」
「悪かったな、他にいなかったんだよ」
早くも内輪もめをし始めていた。
五人は浩紀のアパートの下まで来た。
「ちょっと、これでも食べて、少し酔いをさまして来なさいよ」
可憐が亮太にフライドチキンを渡した。
「こんなの食ったら吐いちゃうよ、俺…」
「少し吐いて酔いをさませって言ってんのよ」
「ちぇっ、わかったよ、そう邪険にすんなよ」
亮太は他の四人を待たせて一人物置のある所まで来ていた。
とりあえず、立ち小便をするためだ。
見ると物置が少し開いている。
亮太は物置を除いた。
すると、月明かりに照らされて小さな石棺が見えた。
何だろうと思って近づくとうっかり持っていたフライドチキンを落としてしまった。
だが、落ちたはずのフライドチキンが何処にもない。
フッと見ると、石棺が少し大きくなっているように見えた。
もしかして、石棺が食べたのかな?と思った亮太はリュックに入れていたお菓子を石棺の隙間に放り込んだ。
やっぱり、石棺のところで食べ物が消えていた。
そして、少しずつ、石棺が大きくなった。
「おもしれー」
亮太は面白がって石棺にどんどん食べ物を放り込んでいったが、段々大きくなる石棺に次第に気味が悪くなり、物置から出ようと石棺に背を向けた。
それから、亮太という一人の人間は陰も形も無くなっていた。
彼もフッと消えたのだ。