「やっほー、なっちゃん、元気ぃ?」
「こ、来ないで…」
部屋に入ると尚緒は怯えていた。
精神的にかなり参っている様子だった。
「なっちゃん、前に上履き隠されたり、糊とか、クリーム体操服につけられていた事あったよね~。あれ、犯人わかったよ。用務員の長井(ながい)だったよ」
「うそよ!」
「それがね、ウソじゃないんだよ。不審者用の監視カメラにばっちり映ってたんだって」
「え?…」
「前にさ、なっちゃん、あいつの大事にしてた湯飲み、間違えて割っちゃったじゃん。あいつ、その事根に持ってて、嫌がらせしてたんだって」
「あいつ、クビになったからもう、学校来ても平気だよ」
犯人は長井という人間…
その事が尚緒の心を落ち着かせていった。
犯人は人間…
悪夢じゃない…
それが、尚緒を安心させた。
少しずつだけど、不安が取れていく…。
その日は悪夢を見なかった。
それまで、毎日見ていたのにウソのように見なかった。
こんなにすっきりした朝は久しぶりだった。
「尚緒ちゃん、大丈夫?まだ、無理しなくても…」
「大丈夫。遅れを取り戻さないと落第しちゃうし、私、今日から頑張って学校行ってみるわ」
「無理しないでね。学校に行く事より、尚緒ちゃんの身体の方が大事なんだから」
「わかってる。ありがとね、まま」
尚緒は再び、学校に行く事にした。
「おはよう、なっちゃん」
「おはよう、るーちゃん」
「もう、良いの?」
「うん。ゴメンね、心配かけたね」
「一時はどうなるかと思ったよ」
「へへ、ソーリー」
「行こ、学校、遅れちゃうよ」
尚緒と琉生は学校に走って向かった。
尚緒は思った。
今までのは友加里の死のショックで一時的に鬱状態だったから、白昼夢でも見ていたんだ。
気のせい、気のせい…
そう、思った。
そう、思ったが…
「助かったと思ったか…?」
すれ違った小男が一言発した。
「!?」
尚緒は振り向く。
尚緒は見た。すれ違った小男の顔はあのひょろっとした気持ちの悪い男にそっくりだった。
ガクガクと震え出す…。