「君もその怪しい男を見たのかい?」
警察官が琉生に尋ねる。
「いえ、特には…。先日、友達が亡くなって、その友達も同じ様な事言っていたから、うつったんじゃないかなって思います。ちょっとナーバスになっているんですよ」
「違う、確かに見たってば…」
「君は疲れているんだよ。今日はもう帰ってゆっくり休みなさい。すっきりしたら、そんな不安は無くなるよ」
「違うんですって…」
「なっちゃん、良いから帰ろう。お巡りさんに迷惑だって…」
「るーちゃんも見たでしょ、あの怪しい男」
「疲れているんだって、なっちゃん…」
警察官も琉生も尚緒の言うことを信じてはくれなかった。
怪しい男は今もにやにやしながら、尚緒の事を見ているのに…
その夜、学校の右側の入り口から入ると頭に植木鉢が落ちてきて尚緒の頭に当たる夢を見た。
朝、起きた時、夢の内容は忘れてしまったが、悪夢を見た気持ちになった。
憂鬱な気持ちのまま朝ご飯を少しだけ食べたが、戻してしまった。
「おはよう、なっちゃん」
「…おはようあっちゃん…」
藍那が元気に声をかける。
だが、尚緒は元気が無い。
尚緒と藍那はそのまま、下駄箱で上履きに履き替えるために、正門玄関の右側の入り口にさしかかった時、昨晩見た悪夢がよみがえる。
「ごめん、あっちゃん、私、こっちから…」
左側の入り口から入ろうとすると…
ガチャン!
右側の入り口に植木鉢が落ちた。
「ひっ…」
青ざめる尚緒。
右に行っていたら尚緒に当たっていたかもしれない…。
悪夢が現実になりかけた…
フッと上を向くと…
「ごめーん、大丈夫だったぁ~?」
上を向くと玄関の上の窓から掃除をしていたと思われる女生徒が声をかける。
友達の横山 江利(よこやま えり)だった。
彼女も尚緒とは仲が良かった。
横にいる里中 未来(さとなか みく)も同じ様に仲が良い。
二人に悪意は無い…と思うが…昨夜の夢ではしっかりと悪意のようなものを感じていた。
フッと校門の外を見ると…
まただ、また、あの男が覗いている…。
あの男の位置から植木鉢を落とす事は不可能…
不可能だとは思うが、それでも、無関係ではない…
そんな気がした。
女性としての生存本能がやっぱりあの男は危険だと告げている。