「尚緒ちゃん、災難だったね、大丈夫?」
娘の帰りを待っていた母親が事情を聞かされて心配する。
「大丈夫じゃない…、気持ち悪い…。」
「そう、今日はもう休みなさい。お通夜今夜だって。辛いなら欠席しても…」
「いい、出る。ゆかりんと最後に話したの私だし、おばさんに言わないと…」
「無理しちゃだめよ…お通夜にはお母さんも一緒に行くからね」
「うん、ちょっと休んでるわ」
「そうしなさい。時間になったら起こすから…」
「わかった…」
尚緒はそのまま仮眠を取った。
「う、うあぁぁぁぁ…」
「尚緒ちゃん、尚緒ちゃん、しっかりして、尚緒ちゃん…」
「まま…」
「うなされていたわよ。大丈夫」
「う、うん、ちょっと怖い夢見たから…」
「そう、あんなショッキングな事があった後だもの仕方ないわ」
「水、ある?…」
「ちょっと待ってて…」
母親はコップに水を注ぎに行った。
尚緒は、友加里の生首が飛び回る夢を見た。
顔は悪魔のような形相だった。
冷や汗が出るほど怖かった。
友加里のお通夜はしめやかに行われた。
彼女の頭部はまだ、見つかっていない。
彼女の母親と弟は泣き崩れていた。
父親は犯人を見つけたらそのまま殺してしまうんじゃないかというくらいの形相だった。
お通夜の帰りに尚緒は怪しい男に会った。
「次はお前だ…」
その言葉だけをつぶやいていた。
尚緒に向けて言ったようなそうでないような…どちらにせよ、気持ちの悪い一言だった。
一瞬、友加里を殺した犯人かもとも思ったが友加里が気にしていた男とその男はあまりにも相貌が違っていた。
尚緒が見た男は背が高くひょろっとしていた。
尚緒は小太りの男が犯人だと思っているので、そのひょろっとした男はただの変質者…そう思っていた。
帰って来てから、尚緒は疲れていたもののなかなか寝付けなかった。
だが、次第に睡魔が出てきてやがて、眠りについた。
尚緒はまた、夢を見た。
またしても、嫌な夢だ。
夢の中にはお通夜の帰りに見たひょろっとした男がじっと立ってこちらを見ているという夢だった。
襲われた訳でもないし、何か嫌がらせを受けた訳でもない。
ただ、じっと立ってこちらを見ているだけだった。
だが、どうしようもない不快感が彼女を襲った。
直感的に、この男が自分に悪夢を運んでくると、
そう思った…