この頃の吟侍にはセント・クロスの子供達には内緒にしている秘密があった。
それは偽物とすり替わっていたことだ。

ずっと食堂にある黒い玉と会話し続けていた吟侍はある時、お手伝いのマリアさんの三面鏡を使って異世界、パラレルワールドの三人の吟侍に会うことが出来た。
はじめは黒い玉の言う冗談かと思ってはじめたおまじないだったのに、本当に自分のそっくりさんが出てきた時にはびっくりした。
三人の吟侍は当時の吟侍と違い、とても優秀で、幼いながらももう、冒険者として活躍していた。
そして、黒い玉は話を持ちかけたのだ。この三人に変わり、異世界で冒険し、カノンにふさわしい男にならないか?と。
吟侍は首を縦にふり、偽吟侍達と度々入れ替わり、冒険をして、心と体を鍛えていったのだ。
吟侍達四人はできの良いと思われる方から【1号】、【2号】と呼び合い、本物は【4号】、つまり、一番格下だったが、他の吟侍との実力差を埋めようと必死だった。

一方、普段の吟侍のように振る舞う偽吟侍達に子供達は全然気がつかなかった。
だが、カノンだけは、吟侍の微妙な違いに気づいていたようで、偽吟侍に対しては【吟侍君】と呼び、本物に対してだけは【吟ちゃん】と呼び変えていた。
二人はまだ、十歳。幼いけど、二人は恋人と呼んでもおかしくないくらいお互いを知り合っていた。
 だが、運命は二人を切り離すために動き出そうとしていた。