さわさわ…
「ぎーんちゃん。」
「うわったっと…なんだ、お花ちゃんかぁ…」
孤児院セント・クロスの裏庭にある大樹、ホープウッドによじ登り、寝ていた吟侍にカノンが声をかける。
【お花ちゃん】とはカノン→花音→お花ちゃんで吟侍が勝手につけた彼女の愛称だ。
カノンは一国のプリンセス、吟侍は孤児院育ち。いわゆる身分違いではあるが、二人は恋人同士だった。
「また考え事?」
「寝てたの。急に話しかけるから落ちそうだったよ」
「うそうそ、吟ちゃんいっつも半分起きてるもん」
「いやいや、寝てたって」
「うーそ。それより、ぎんちゃん三日ぶりだね。元気だった?」
「え?昨日も会ったんじゃないの?」
「ううん。吟ちゃんとは三日ぶり」
「え…あ、そうだっけ?」
「そうだよ。初めて私に愛称をつけてくれた人は間違えられないよ」