吟侍が七歳になってしばらくすると、政(まつりごと)の一環で、メロディアス王家から第六王女、ソナタ・リズム・メロディアスと第七王女、カノン・アナリーゼ・メロディアス王女が訪れた。
次代の王は王女が全員、成人したとき、その中でもっとも民に慕われていたものが女王として即位することになっていた。
そのため、王女達は民のために様々な政策を打ち立てアピールしていた。
王女は七名おり、何の実績もなかったソナタとカノンの王位継承権は年の順通り、第六位と第七位だった。
ソナタとカノンが孤児院を訪れてまわるのもそのことの一つだった。
勝ち気なソナタとおっとりしたカノン…
実はこの二人、孤児院を訪れるのはセント・クロスが三軒目だった。
前の二カ所はソナタの「うっさい、だまれ、へーみんども!」の一言で、関係を悪化させてきている。
つまり、失敗してきているのだ。
「うっわぁー人形みてぇだな…」
「かわいー。」
セント・クロスの子供達は双子姫をもてはやし始めた。
だが、ソナタはこの言葉が大嫌いだった。
なにかバカにされた気がするからだ。
今回もやはり我慢をし始めるソナタ。みるみる顔が紅潮していく…
双子姫とセント・クロスの子供達の感情に温度差が生まれ始めた。
ソナタの我慢も限界に近づく…そんな時、
「ソナタお姉様。私、この方にニックネームというものをいただきましたわ。お花ちゃんですって、かわいいでしょう?」
満面の笑みを浮かべる妹。本当にうれしそうだった。
双子ということもあり、ずっと、ソナタに付き添い、オロオロするだけだった妹が初めて普通の人との交流を喜んでいる。
見ている姉もフッと気持ちが緩んでいく。
ニックネームを考えたのは吟侍だった。カノンの名前の由来は別なのだが、彼は漢字で【花音】と置き換え、そこから【お花ちゃん】と呼んだのだ。間違ったニックネームかもしれないが漢字の名前を持つ彼ならではの愛称だった。
「へぇー、じゃあ、私のは?」
ぼそっとつぶやくソナタ。
しまった…考えてない…
カノンのことばかり考えていてソナタのことを考えていなかった吟侍。
言いにくそうにもごもごと
「え、えーと、…おそなちゃん…」
由来は【お供え物】からだった。
ポカッ!
「私は神仏か何かか!」
「あいたっ!」
そのツッコミが子供達には大きくウケた。これが、きっかけで双子姫は子供達とうち解けることができたのだ。
双子姫はセント・クロスの子供達と交流を深め、時はあっという間に三年が経過した。
その頃にはソナタはガキ大将、カノンはみんなのアイドルという立場を得ていた。