$宇田明のウダウダ言います
写真1 ドイツIPMで最優秀賞を受賞した宮崎県のスイートピー「ロイヤルホワイト」

ドイツで開かれたIPM(国際花メッセ)において、宮崎県尾鈴農協のスイートピー「ロイヤルホワイト」が最優秀賞を受賞したことは、2月5日のブログで紹介しました
また、日本の花のニューヨーク輸出でもスイートピーが一番人気
スイートピーのふるさとは、イタリアシシリー島
つまり、スイートピーはヨーロッパの花
日本でつくっている品種の多くも欧米品種
受賞した「ロイヤルホワイト」も国産ではなく、欧米の品種
淡路島のスイートピー主力品種は、そのものずばりの「ミセス・ダグラス・マッカーサー」
ヨーロッパ生まれで、さらに欧米品種を用いて、日本のスイートピーは世界一の品質
なぜか?
1.欧米人にとってスイートピーは春の花壇の花
葉の脇にでるステムを切り取って切り花にする発想がなかった
2.切り花用の栽培技術を作り上げた先駆者の功績
カーネーションの父が土倉竜次郎なら、
スイートピーの父は同年代に活躍した荒木石次郎
東京多摩川左岸に伯爵烏丸光大が開いた玉川温室村
入植第一号が荒木石次郎
1924年(大正13年)のことである
荒木はここでスイートピーの栽培技術を極め、スイートピーの荒木とよばれた
荒木の技術がなければ、今日の日本のスイートピーはない

$宇田明のウダウダ言います
写真2 荒木石次郎温室の広告

玉川温室村は戦争を生き抜いたひとびとにより、戦後も花をつくりつづけられたが、
1994年(平成6年)最後まで残っていた間島五郎の温室が取り壊され、
幕を閉じた
現在、温室村のあとは、東京都大田区田園調布
日本を代表する高級住宅地
玉川温室村の歴史については別の機会に報告
3.欧米人がスイートピーを作りこなせないのは
「水、肥料をやらない技術」をもたないから
水、肥料がないと植物は大きく育たない
一方、スイートピーは水、肥料が多いと花がつかない
茎が伸び、葉が繁るばかり
いじめて、はじめて花をつける
いじめすぎると株が弱り、花が貧弱になる
短く、花数がすくない切り花
つまり、アクセルを踏みながら、ブレーキをかける
しかもスイートピーの根は地中深くまで伸びているので、
今の植物の様子を見てからブレーキをかけても
すぐには止まれない
このアクセルとブレーキの加減が日本の農家にはできる
水、肥料をガマンできる
この技術があって、スイートピーだけでなく日本のトルコギキョウも世界一になった
マーガレット、スカビオサ、ヒマワリ、ハボタン、ケイトウなどの草花がつくれるのもこの技術
欧米人はアクセル全開で、大きく大量につくることは得意
しかし、ブレーキがふめない
4.春の花スイートピーを年内から咲かせるのは
たねを冷蔵して低温にあわせているから
この技術のもとはヨーロッパ(種子春化、またはシードバーナリセーションという)
この技術をスイートピーに応用したのは日本人の知恵
5.スイートピーは生け花するとすぐに花が落ちる
これを防いでいるのがSTS(商品はクリザール、ハイフローラ、美ターナルなど)
この技術もオランダで開発
きっちり実用化したのは日本
まとめ
日本の栽培技術の神髄は「ブレーキをかける」
それが、近年は欧米流にアクセル全開で「大きくつくる」一辺倒
もう一度、ブレーキ技術を再確認しましょう
「しまった」、「味のある」世界に通用する花はブレーキ技術から生まれる