日常の「不便」に気付くまなざし
10月1日、東京・ミッドタウンタワーで行われた
2009年度の「グッドデザイン賞ベスト15」をはじめとする
特別賞の記者発表会に出席しました。
11月6日には、今日発表された「グッドデザイン賞ベスト15」の中から
グッドデザイン大賞1件が決定し、
大賞以外の14件がグッドデザイン金賞に確定します。
具体的な受賞作品など、詳細はグッドデザイン賞のホームページ
を
見てもらって、ここでは特別賞の中にあった
ふたつのフォントを紹介したいと思います。
まずひとつ目は、今年新設された「グッドデザイン・フロンティアデザイン賞」を
受賞した株式会社デンソー+タイププロジェクト株式会社の
自動車用フォント「ドライバーズフォント」です。
フロンティアデザイン賞は近未来の生活を示唆する
「まだ実現されていないものごと」に送られる賞です。
ドライバーズフォントは、
運転中のドライバーが安全かつ快適にカーナビ等の
表示デバイスから情報を取得することをめざして開発されたそうです。
『それは究極の「ちら見」フォント』というコピーが印象的でした。
ふたつ目は、「その時代の生活者の支持を得て様式に至る
完成度を持つと認められるもの」に送られる
「グッドデザイン・ライフスケープデザイン賞」を受賞した、
株式会社イワタの「イワタUDフォント」です。
高齢化による老眼や白内障、また弱視などといった悩みを抱える人だけ
ではなく、ユニバーサルデザインの視点から年齢や能力の違いに
関わらず、読みやすく、誤読されにくいことを
基本コンセプトに開発されたフォントです。
両者とも文字情報を対象者に正確に伝えることが最大の目的になっています。
「ドライバーズフォント」と「イワタUDフォント」は、自分が車を運転していたり、
老眼や白内障、弱視に悩む立場になったりしたときにこそ、
有効性を実感できるのだと思います。
現在は老眼や白内障、弱視の状態を体験できるゴーグルがあり、
あくまで一時的とはいえ、視覚に障害のある人の困難さを感じることができます。
今回の「ドライバーズフォント」と「イワタUDフォント」の特別賞受賞は、
日々何気なく接している「文字」への関心を向けさせてくれました。
日常の小さな不便に気付き、その現状に満足せず、改善を実践する。
「言うは易し」ですが、これは誰にでもできることではありません。
今回のふたつのフォントの特別賞受賞は、日常の小さな不便を改善した
実践者が正当に評価された好例だと思います。
UD編集部 富樫

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