使われない集会所、孤立する仮設入居者-震災半年・宮城(3) | 貴方のこゝろにバンドエイドを。(失恋・難病)

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使われない集会所、孤立する仮設入居者-震災半年・宮城(3)
キャンナスのお茶飲み会。必要に応じ、看護師が入居者をマッサージすることも(石巻市)



 東日本大震災の発生から半年。住む家を失った被災者の多くは、生活の場を避難所から仮設住宅に移した。しかし、仮設住宅に移り住んだことで逆に孤立を深め、体調を崩したり、自殺願望を抱いたりする人も少なくない。こうした状況を受け、国は入居者同士の交流を促すため、仮設住宅に集会所や談話室を併設するなどの対策を講じてきたが、その集会所や談話室も、ほとんど利用されない状況が続いている。


【複数の写真入りの記事】


 全国訪問ボランティアナースの会「キャンナス」の石巻事務所では、8月末から石巻市内の仮設住宅でお茶飲み会を実施している。健康相談や心のケアを兼ねた交流会で、主な会場となるのは、仮設住宅に併設された集会所や談話室だ。9月8日のお茶飲み会も、談話室を利用した。 この日は、キャンナスで石巻エリアのリーダーを務める看護師・佐々木あかねさんらの呼び掛けに応じ、4人の住民が談話室に集まった。4人は、震災発生から現在に至るまでの避難生活について、尽きることなく語り合った。

 震災発生直後にはパン1個、バナナ1本を複数の人で分け合い、食糧難をしのいだこと。

 ペットボトルのキャップで分け合わなければならないほど、飲料水も乏しかったこと。

 また、ある女性は、仮設住宅での生活について、こんな風に語った。

「何かと不自由なことは間違いない。それでも、なるべく物は買わずに我慢している。いずれ、ここから出て行かなきゃならないから」 一方、キャンナスの看護師らは、会話を妨げないよう、タイミングを見計らいながら、住人に対する血圧測定などを実施した。



■「来週はこの世にいないかも」と語る仮設住宅の住民



 この日のお茶飲み会は、予定時間を1時間近くオーバーして終了した。佐々木さんは、こうした訪問の途中、自殺しかねないほど気落ちしている男性を見つけたこともあるという。

「お茶飲み会に来た人から、『私たちより、あの家の人と話してみたら』というアドバイスをもらえたことがきっかけで、その人が住む仮設住宅を訪れたのですが…」

 震災で命を落とした妻の葬式を翌日に控えていた男性は、「顔が完全に青あざで覆われているのか、と感じるほど顔色が悪かった」(佐々木さん)。体の状態や悩みについて尋ねた佐々木さんに対し、男性は、眠れない日が続いていることや、いつも食欲がないことなどを話した上で、「(妻の葬式が終わった)来週には、もうこの世にいないかもしれない」と語った。

 佐々木さんは、この男性がうつ状態にあると判断。石巻市の担当部署に連絡した上で、3日後、改めて男性の仮設住宅を訪れ、その様子を確認した。

「その時は、真っ青だった顔色も、血の気を取り戻していましたし、『妻の葬式も終わった。お墓を作らなきゃならんね』と、次の目標も語ってくれました。とりあえず、最悪の状態は脱していました」



■集会所を積極活用する住民は少数派



 この男性の事例が示しているように、仮設住宅で生活する人が、お互いの様子に気を配るようになれば、自殺や孤立死も防ぎやすくなる。災害救助法が「仮設住宅を同一敷地内又は近接する地域内におおむね50戸以上設置した場合、居住者の集会等に利用するための施設を設置できる」と定めているのも、住民の孤立を防ぐための工夫だ。 ただ、仮設住宅に集会所や談話室を設置するだけで、住民同士の交流が自然と活発になることは考えにくい。たいていの場合、仮設住宅への入居は抽選によって決定される。その結果、お互いの名前も顔も知らない者同士が隣近所となることが多く、住民のコミュニティが生まれにくいという背景があるからだ。



 事実、仮設住宅の住民が自ら集会所や談話室の鍵を管理し、積極的に活用しているのは、131の仮設住宅の団地(住宅数は6359戸、9月段階)がある石巻市で10数団地、85団地(住宅数は3369戸、9月段階)がある気仙沼市でも8団地に過ぎない。9月8日、キャンナスがお茶飲み会を開催した団地でも、7月の仮設住宅開設以来、談話室が使われたのは「8月の末に市の福祉関係者が来て、入居者全員を集めて話をした時と今回だけ」(お茶飲み会に参加した男性)という。



■秋に向け、孤立防止のための取り組み強化を



 こうした状況を受け、各自治体では仮設住宅の団地に担当者を派遣し、それぞれの団地で簡単な自治会組織を作るよう働きかけるなどの活動を実施。さらに、保健師による全戸訪問など、仮設住宅の住人の健康維持や心のケアを目的とした対策にも取り組んでいる。ただ、行政による働きかけも、仮設住宅の住人にはいまひとつ響いていないようだ。お茶飲み会に参加した男性は、「市の担当者は『住民みんなが交代で班長を務めてもいい』と説得するけど、今のところ、それは実現しそうにない。たぶん半年たっても1年たっても実現しない」と語る。



 キャンナスのコーディネーターを務める菅原健介氏は、秋に向かう今こそ、住民の孤立を防ぐための取り組みを強化すべきと訴える。

「気温の低下とともに、体調管理が難しくなるのははっきりしています。さらに日照時間が短くなれば、部屋に引きこもる時間も長くなる。その分、孤立したり、自殺したりする危険も高まるのではないでしょうか」





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