ぜひ参考にしてみてください。
昨年のチリ鉱山落盤事故で、奇跡的に生還した作業員33人のうちのひとり、エディソン・ペニャさん(35)が、アルコール依存症と薬物中毒の治療のため、リハビリ施設に入院したと地元紙が12日、報じた。閉じ込められた坑道内でランニングを日課とし、“ザ・ランナー”の異名で知られたペニャさんだが、事故の恐怖の後遺症や、有名になりすぎたプレッシャーから、酒とドラッグに走ってしまったという。
世界中をわかせた昨年10月13日の救出劇から間もなく1年。鉱山の地下に約70日間も閉じこめられながら、奇跡的に生還した33人の作業員たちだったが、事故の“後遺症”は、続いていた。
チリの地元紙によると、作業員のひとりペニャさんは、このほど首都サンティアゴにあるリハビリ施設に入院した。目的は、重度のアルコール依存症と薬物中毒の治療。生還後に、酒と薬物におぼれるようになったという。妻のアンジェリカさんは、家庭内暴力をふるっていた時期もあったことを同紙に告白している。
理由について、アンジェリカさんは「有名病」と表現した。地下で毎日、ランニングを欠かさなかったペニャさん。その逸話から、“ザ・ランナー”と呼ばれ、昨年11月のニューヨークシティー・マラソンや、今年2月の東京マラソンにも招待され出場していた。歌手エルビス・プレスリーの大ファンとして米国の邸宅にも招待された。33人の中でも際立って有名になったひとりだった。
だが、その陰で苦しんでいた。地下生活中から、うつの症状に悩んでおり、昨年末にはパニックの発作に襲われ、入院したこともある。事故のフラッシュバックに、有名になりすぎたことによる心の重圧が重なり、苦しみから逃れるために、酒などに走ったとみられる。施設でのリハビリは、1~2か月かかる見込み。
ペニャさんだけではない。33人の中には、最近の講演で「狭い場所にひとりでいると不安になる」と悪夢に悩み続けていることを告白した作業員もいる。事故による精神的、肉体的なダメージから抜け出せず、半数近くは、再就職など、社会復帰できていない。明るい日の下に生還した作業員たちだが、事故は、いまだに彼らの人生に暗い影を落としている。
◆エディソン・ペニャ 1976年2月28日、チリ北部出身。昨年8月5日、サンホセ鉱山でほかの作業員とともに落盤事故に遭遇。ランニングを高校時代から日課としており、全員の生存が確認された同月22日頃から、救出されるまで、坑道を毎日45分間走っていた。救出順は33人中12番目。
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