以前、このブログで、巷の宝石鑑定所の「隕石鑑定書」は、隕石の見た目で判断してるだけと書きました。
(その見た目もあてにならない鑑定書も多々見受けられます。
本物を見たことがなく、ネットに落ちている写真で見比べているのではないかと思われます。)

それなら、隕石の粉(こな)の成分分析はできるのかというと、それもできないようです。

「警視庁、国税局、裁判所などの国家機関からの依頼も多い」という宝石鑑定協会で、ギベオン隕石の粉を、「ギベオンなのかどうか」と鑑定してもらいました。

結果は、ギベオンではない!ということでした。

「依頼品をピックアップ法で成分分析を行い精査したところ、Fe2(酸化鉄、89.9312%)が多く含まれ、次いでNiO(酸化ニッケル、7.0018%)、Cr203(酸化クロム)が含まれていることが分かります・・・(略)・・・
当協会が定めるギベオンに含まれる成分は、Fe2(酸化鉄)概ね91%、NiO(酸化ニッケル)概ね8%、その他Co(コバルト)P(リン)Ga(ガリウム)Ge(ゲルマニウム)Ir(イリジウム)と定義しております。依頼品は、当協会が定めるギベオンに含まれる成分が含まれておらず、FeO及びNiの含有率が低いことからギベオンであるとは認められません」という結果が出ました。

(鑑定費用 33,000円)

同じ粉を、日本を代表する化学メーカーで成分分析したところ、
Co コバルトも、P リンも、Ga ガリウムも、きちんと検出されました。
(イリジウムとゲルマニウムは、検査の前の時点で「今回の測定法では分析できない」といわれてました。)

そんなわけで、巷の宝石鑑定所には、金属の成分をきちんと分析する機器もなければ能力もないと言わざるを得ません。
含有率にしても、その検査法では1~2%は誤差に過ぎないのに、それを根拠に「ギベオンではない」という結果を出しています。
(誤差のない含有率を調べるには、もっときちんとした検査法が必要で、お金がかかります)

そもそも「当協会が定めるギベオンに含まれる成分は~」と言ってますが、その定義は、Wikipediaのコピペに過ぎません。
実際、ギベオンには、銅も含まれていますが、巷の宝石鑑定所では分析できていません。

ちなみに、ギベオンを放射化分析をすると、 Re(レニウム) Pt(白金) Au(金)As(ヒ素) W(タングステン)も検出されます。
白金(プラチナ)と金の割合が、同じグループの鉄隕石よりやや高いです。(うれしい)

それから、つい先日、知人が、東京工業大学の教授に、隕石を預けて調べてもらったけど「地球外の物体であること」までしか分からなかった。
隕石かどうかは、分からないと言われたとのことです。
本物とされるものがなければ、比較分析できないので、「地球のものではない」までしか言えないのが、誠実な答えだと思います。

そんなわけで、村長がよく言ってるように「隕石の鑑定書が出せるところなど日本にない」のです。

3,000円や5,000円程度の鑑定書を取るくらいなら、自分の目で見て比べたほうが精度が高いし楽しいですよ。

 

新宿御苑のサクラ