こちらのつづき、ラストです。


「毎日?」


「うん、そう」


私は突っ伏したまま、そう答えた。



しばらく間があって、コピー機の印刷音が聞こえてきた。

顔だけそちらに向けたけど、先生の姿は見えない。


コピー機の音だけが、今ここにあった。



ーもう授業始まったんだな。


授業中の校内は、実はとても静かだ。
こうやって外の世界にいると、それがよく分かる。

規則正しい機械音が不思議と心地よくて、私は自然と目を閉じていた。



ーあったかくて、気持ちいいなぁ。


目を閉じていても光を感じるほど、この部屋には日が差していた。

ウトウトしながらも、なんだか少しラクになってきた気がして、ゆっくり体を起こそうとすると、S先生がちょうどこちらに来た。



「○○さん、これよかったら読んでみて」


そう言って渡されたのは、ダブルクリップで留められた分厚いコピーの束。


A3サイズのそれには、食物繊維が多い食べ物の一覧や、消化器の働きや仕組みの図案、女性の身体についての解説などが載っていて、さらにS先生が大事だと思うところには赤ペンで印がついていた。



「いっぱい、いろんな本があるからね」


そう言うS先生の教卓まわりは、たくさんの本が広がっていた。



しばらく私はその束を両手で握りしめていた。


部屋は日に満ちて、辺りは白く輝いている。

それはあたたかく、春を告げていた。



・・・



S先生はそれ以上何も言わなかったけど、
私はその日から下剤を飲まなくなりました。


このときはまだ、
自分が摂食障害だと気づいていません。
※気づいたのはもっと後、社会人になってからです。

さらに言うと、
資料の内容もあまり覚えていません。


でもわたしは、
先生からなにか言葉以上の、
とても大きなものを感じました。


だから変わったのです。


人が本当の意味で気づくのは、
愛に触れたときです。



自分で気づくことを大事にしてくれたこと。

見ていないようで見守っていてくれたこと。

世間の常識よりも“健康”を願ってくれたこと。


あのときのS先生の言動は、
歳を重ねて成長するほど気づきがあります。

その度にわたしは、
先生のようなすてきな人に
なりたいと思いました。

先生が与えてくれたものを
与えられる人になろうと思いました。



「いっぱい、いろんな本があるからね」


この「本」は「世界」でもあるなぁと、
今の私は感じています。


いっぱい、いろんな世界がある。



先生、ありがとう。

春が近づくたび、
あの日のことを思い出します。



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