利に放(よ)りて行えば、怨み多し(里仁第四 12)
『利益ばかりを基準にしていると、怨みをかって
しまう』
ベニスの貿易商人アントーニオは、友人パサーニオ
が、莫大な財産を相続した美貌の女性ポーシャと結婚
する資金を用立てるために、悪徳金貸業のユダヤ人
シャイロックから金を借りるが、返せなくなった。
証文では、自分の体の肉1ポンドを切り取られる運命
にあったが、公爵が裁判官をつとめる法廷で、法学者
に変装したポーシャが、機転を利かせ、有名な「肉は
良いが血は一滴たりとも出してはならぬ」の論理を持ち
出して、シャイロックに元利金を放棄させる。シャイ
ロックはほうほうの体で法廷をあとにする。ここまで
は、利にこだわりすぎたシャイロックが、怨みに敗れた
形となっている。しかし、利に汲々とするシャイロック
は何ゆえに、利にこだわるのか? ユダヤ人は、キリスト
社会からはみ出しを喰らっており、その恨みが、彼をして
利に傾けさせた。利の前に、すでに怨みがあったからで
ある。怨みが怨みを呼ぶ場合もある。
「ベニスの商人」シェークスピア 1597年頃
(久井 勲)