人にして仁ならずんば、礼を如何(いかん)

          (八第三 3)


『人として仁でなければ、礼があっても

どうしようもない』

  →礼を形式的なものととらえるな。

 ギリシャ悲劇の白眉「アンティゴネー」で、

テーバイの先王オイディプスは、自身の運命

のむごさに煩悶しながら放浪の果てコロノス

の森で死んだが、それに最後まで付き従った

健気な娘アンティゴネーがテーバイに戻った

とき、兄弟達は内部抗争にあけくれていた。

現王クレオン(叔父)にとって、彼らは反逆者。

テーバイの法では、反逆者の死骸は埋葬でき

ないことになっている。計り知れない不幸を

背負いながらも、人としての情を失っては

ならぬと決意するアンティゴネーは、法を無視

して、彼らの死骸を城門の前で堂々と埋葬する。

「人として要求される優しさは、人間の定めた

法に優先する」は、古来法哲学上の重要な

テーマとなっている。

  「テーバイ攻めの七将」 アイスキュロス 

   BC5世紀  

  

(久井 勲)