34年ぶりに学会に入った。

 先日、本間先輩と話していて、僕が話している事をきちんとまとめて学会誌に発表した方が良いので学会に入れと言われた。それで、早速、日本医史学会に入った。

 針灸の論文を掲載している学会は2つあり、ひとつは日本鍼灸学会、もうひとつが日本医史学会である。日本鍼灸学会は、針灸の治療観点からの論文を掲載している。日本医史学会は、針灸の文献学的な論文を掲載している。

 34年前までは、僕は、ニューロコンピュータを応用したロボットシステムの研究をしており、計測制御学会とシステム制御情報学会に入っていた。北海道大学で行われた学会で、研究発表したこともあった。そこからずいぶん長い間、学会とか大学といった世界からは離れていた。

 先日、谷崎俊之さんという数学者の方が、日本の上代の暦について論じた論文をネットで読んだ。上代において日本で使われていた暦はどのようなものであったのか検討した論文である。当時は今の1年を前半後半に分けてそれぞれ1年とし、当時の1年間は今の2年間に相当していたのではないかということを検討した論文である。まさに同じ事が、針灸の古典文献である『黄帝内経』の第一章に書かれている。『黄帝内経』には、「昔の人は百歳まで生きていた人が多いのに、今の人は五十歳くらいである」と現代人の不養生を嘆くことが書かれている。それは、文明や文化がそう大きく衰退していないのだから、別の理由があるということで、谷崎俊之さんの論文は大変に重要な視点をもたらすものであると思う。

 そんなことで現代は、数学・古文・漢文・鍼灸などが並行的に論じられるような時代になってきており、いままでの学会の枠を越えた研究というものが必要になってきていると思う。
 日本医史学会の学会誌を見ると、日本の古い医術、中国の古い医術、古代ギリシアから古代ローマや中世の医術などが論じられている。
 たとえば、アロマテラピーは、アラビアの医術であり、そこからハーブや薬草を扱う「魔女」や」「白魔術」へと発展して、現代のヨーロッパ薬学の基礎になっている。
 たとえば、解熱鎮痛薬のアスピリン(アセチルサリチル酸)は、頭痛や発熱の患者に対して、魔女が柳の枝を煎じて飲ませたことが最初である。そうして、柳の枝の有効成分のみを精製・濃縮すると、サリチル酸になる。サリチル酸は毒性が強いので、アセチル化という化学変化で類似物質に変えて、アスピリンができた。この濃縮技術はアラビア化学の技術であり、官能基を付加することで分子構造を変えて作用はそのままで副作用を減らすということは現代の薬学でも行われている。

 そういうふうに、世界はくっついているので、面白いと思う。

 さっそく、日本医史学会から昨年分と今年1月号の学会誌が届いた。楽しみである。