古い書類など処分していたら、針灸学校に通っていた時の書類の束が出て来た。

 針灸学校の後半は、俺彼女の親父さんが3000万円ほど借金を残して亡くなったので、その処理に忙殺されていた。
 すっかり忘れていたが、久しぶりに思い出した。
 弁護士や不動産屋などの交渉や、返済計画の立案を、全部僕がやって、ここまでやれば大丈夫だなというところまで仕上げて、彼女に渡して、針灸学校に戻れるかな?と思ったら、次に僕の父親が脳出血で倒れた。それで、父の治療を行っていた。

 針灸で脳卒中の治療ができるが、ほとんど公開されていない技術である。針灸の本にはどこにも書いていないが、陳建民さんの『さすらいの麻婆豆腐』という本の中に、書いてある。そういう特殊技術は、師匠から弟子へ直接伝えられて、書き物としては残さないのが伝統である。

 僕の場合も、師匠が紙に書いて僕に渡して、読み終わったら燃やした。
 どのように伝授されるかといえば、こんな感じである。
 喉が渇いたので喫茶店で一休みしようと言われて、喫茶店に入り、ボールペンを持っていないか?と聞かれたので渡すと、喫茶店のペーパーナプキンに書いて、「これを読め」と言われた。読み終わったら灰皿の上で燃やすことになっているので、燃やした。

 僕の親父の場合、視床に約1センチの出血があり左半身が完全にマヒして、口が閉じないので水を飲ませようとしても漏れるという状態であった。それで、針灸で普通に生活できるまでに、回復させた。

 こんなことをしていたので、針灸学校の後半は、学校にあまり出ておらず、国家試験にも落ちそうであった。
 そんなことを久しぶりに思い出した。