久しぶりに万年筆を使おうとしたら、インクが中で固まってしまっており、使えなかった。インクの種類を変えた際に、洗浄が甘かったようで、もともと詰まり気味ではあった。それで、万年筆を買い直した。

 万年筆を使って感じた事は、最近の紙が平滑になって来て、水が染み込み難いようになっていることである。プリンターで印刷する場合、紙は平滑である方が細かく印刷できる。また、何か飲み物をこぼした時に、紙が水を吸い込み難いように濡れにくいように作ってあれば、汚れることを抑えることが出来る。
 そんな理由で、最近の紙は、万年筆には不適当な紙質になってきている。
 これは、最近気づいたのであるが、最近の紙に柔らかい芯のシャープペンシルで書くと、擦れて文字が消えることが多い。昔のわら半紙のような紙質であればそんな事は無かったのであるが、これも紙が平滑になり、表面に微細な穴など無いようにしてあるために、黒鉛の粒が紙の繊維の間に入り込まずに上に載っているだけだからだろう。
 ということで、最近の紙は、プリンターには適するが、鉛筆や万年筆といった従来の筆記具とは相性が悪くなってきている。

 画材店に行くと、様々な紙が売られている。僕はパステル画を描くので、ちょっと毛羽立った紙の方がパステルのノリが良いので、起毛紙というものを使っていたこともある。それで、伊東屋の紙部門に買いに行くと、最近、カルトナージュなどする人が減ったそうで、起毛紙が売れなくなり、「このロールが無くなったら売らなくなる予定です」と言っていた。そんなことで、茅場町の紙の問屋まで行ったことがあった。
 紙問屋では、少量販売には対応しておらず、裁断機のセッティングに料金がかかるので10枚買うのも100枚買うのも、そう値段は変わりませんよと言われた。結局、何メートルか買って自分でハサミで切った。洋服を作る人が、布をメーター単位で買うのと同じである。
 紙問屋に相談すれば、自分の好みの紙質の紙を買う事ができるが、ともかく業務用なので単位が大きい。

 話を戻すが、万年筆用の紙は、適度にざらついていて吸水性が良く、それでいて裏抜けしないものが良い。必然的にちょっと厚手の紙になる。適度にざらつくというのは、紙の繊維が細いが長いというものが良い。そうした工夫として、綿を混ぜたコットンペーパーというものがある。そうしたものが良い。
 紙を画材として扱う発想から言えば、上述したプリンター用の紙の紙質を変えるための奥の手がある。紙に目の細かいサンドペーパーをかけて表面を荒らすという方法である。これで鉛筆や万年筆の乗りが良くなる。工学部では、製図をする際に鉛筆で書く場合、鉛筆の先の太さを常に一定にするように、サンドペーパーで鉛筆の先を修正しながら描いていく。そのため、筆箱にはサンドペーパーが「芯研器」代わりに入れてある。物を描く場合に、サンドペーパーは必需品である。

 ここ15年程、物を書くと言うことから離れていた。来年は書くと思うので、紙の選定を含めて道具からそろえる必要があると思っている。