昨日9月1日は防災の日であった。
 東京都の防災で印象的なのは、石原慎太郎氏が都知事をしていた際に、新潟県中越地震というものが起き、その際に刈入れが終わった田に、自衛隊のヘリコプターが着陸し、人々を次々に避難させていた映像があり、これを東京都でも災害時に行えないかと検討したが、東京都内にはヘリコプターが着陸できる地点が皆無であることが分かり、東京ではこうした救助活動はできないとなったことである。
 そして石原氏は、東京都で大規模災害が発生した時にどのような状況となるか、都民に実情を説明した。
1、大規模災害発生直後は、交通が麻痺しているために、いかなる公的な援助(救急車や消防車など)も無いと考えて欲しい事。
2、こうした公的援助が無い状態が、3日間は続く可能性が高い事。
3、自力で病院などの医療機関に行っても、倒壊していたり、水道電気などのインフラが止まっており、医療機関が機能していない可能性がある事。

 この状況はタヌキオバサンに変わっても同様であろう。ゆえに東京都民は、自力救済で想定していないと大規模災害時に慌てることになると思う。

 農林水産省は、災害時のマニュアルを公開している。
https://www.maff.go.jp/j/zyukyu/foodstock/guidebook.html
 現在では3日分の水と食料を準備しようという事になっているが、このマニュアルは何度も改訂されており、途中、「21日(3週間)分の水と食料のストックが必要だ」と書かれていた時代もある。これは、災害の中に、スペイン風邪のような毒性の高い感染症が蔓延した際に、感染者は3週間は自宅待機が必要であるということで、「21日(3週間)分の水と食料のストックが必要だ」と書かれていた。そうして数年前に、新型コロナの発生ということで、予測された状況が出現した。なかなか良く検討されていたと思う。
 このマニュアルの現在の版では「3日分の水と食料」と述べられていることは最低限の量であり、できれば「21日分の水と食料」ということで、収納スペースなどの関係で各戸で工夫して欲しいということである。
 その際に、水道・ガス・電気が止まっていても、カセットコンロと水などがあれば、冷蔵庫や台所にある生鮮食品で数日はやっていけるので、出来る限りムダをなくせるように準備すべきであると提言されている。

 これで重要なのは、21日という数値であり、これは持病を抱える人は、常にその薬を21日分はストックしておくべきであるということも含まれる。交通が混乱している状況では、医薬品の入手が難しく、暫くは手持ちの薬で対処していかなければならない。そのためにも、手持ちの薬が21日分を切らないうちに受診して、ストックを持つべきである。
 東日本大震災では、避難したまでは良かったが、薬を持ってきていなかったために、避難所で病状が悪化して死亡した人々が多数出た。東京電力を訴えている人々のほとんどは、こうして死亡した遺族である。特に透析を受けている人は、災害時の対応を主治医などに相談して検討しておくべきである。被害が無い地域まで行きそこに宿泊して透析の治療を受けることになるので、その準備の検討である。

 僕の実家で災害があった際に、インフラが全て止まったが、復旧の順番は次のようなものであった。最初に復旧したのが水道、次に電気であり、都市ガスの復旧は1週間後であった。水道は、壊れにくい水道管の地区では復旧は早い。しかし、本管が破損している場合は、道路を掘り返して本管を修理してからとなるので、早くても2週間後である。電気は架線の接触などがないことを確認し、不在の住宅のブレーカーを落としたり通電を中止したりするなどの安全確認が取れれば、すぐに通電される。ガスは、地区ごとに安全確認を行って供給を再開していくので、その地区の全戸の安全が確認できないと、供給が再開されない。電気の再開時と同じように、各戸をガス漏れ点検していくため、時間がかかる。早くて1週間、遅いと1カ月後となる。

 マニュアルで21日分となっているのは、こうしたインフラの復旧を想定すると、そのくらいは災害時の不便が続くために、その期間分は準備が必要であろうということである。

 さて、こうしたことが行えるのは、ある程度、建物が健全に保たれているという前提である。1981年6月以降の建築基準法に従った建築は割と丈夫であり、1981年5月以前の建物は倒壊したり使用不能になる可能性が高いとされている。1981年5月以前に建てられた建物については建て直すことが推奨され、そうした所に住む人は1981年6月以降に建てられたマンションやアパートや住宅に引っ越すことを強く推奨されている。引っ越すのであれば、阪神淡路大震災の教訓が反映された2000年の建築基準法改正以降の住居が良いと思う。
 高層マンションの場合は、自家発電設備があり、その電力でエレベーターなどを動かすことになっているが、自家発のための燃料の備蓄量が案外少ないマンションもあるため、東京都や東京電力に相談して備蓄量の追加をすべきであろうと思う。

 問題は、やはり、火災である。消防車は動けないために、大規模災害時に火災が発生したら、広範囲に燃え広がる。このマップが東京都によって作成されている。その地区に住む人は、日常的に避難所を確認しておき、災害時には、火災が起きないように火元のチェックが済んだら、早急に避難所への一時退避が必要である。火の手が上がったら、道路が通れなくなり身動きできなくなるかもしれないからである。消防車は来ないという前提で行動が必要である。

 ともかく3日間は、東京では何の援助も無いとして想定しておくことが大切であると思う。