部屋の片づけをしていて、棚の最上段に置いてあった鍼灸師の免許証を引っ張り出したら、書類が崩れて落ちた。鍼灸師の免許が郵送されてきた大型の封筒も一緒に保管されており、中は空かな?と思って見てみると、MITの修了証書が入っていた。しばらく紛失して、どこに行ったのかと思っていたが、ようやく発見した。

 この修了証書を、引っ越したら、部屋に飾ろうかな。英文の表彰状みたいで、なんとなくカッコ良く出来ている。アメリカ人は、見栄っ張りで、権威の象徴についてはデザインを工夫するからである。

 鍼灸院に英文の修了証書が飾ってあって、よくよく見ると、MITの原子力工学科の原子力発電所安全管理者養成コースの修了証であるのは、悪い冗談としては良いかもしれない。
 最近、鍼灸院に外国人も来るらしいので、「私もMITです」とか、「隣のハーバードです」とか、おばあちゃんが「ラドクリフ大です」と言うかもしれない。
 一番丁寧に待遇しなければならないのは、ラドクリフ大卒のおばあちゃんだな。

 現在、ラドクリフ大学は、ハーバード大学に吸収されてしまったが、かつては米国での女子の高等教育機関として有名であった。卒業生の中で最も有名なのが、ヘレン・ケラーである。ヘレン・ケラーは、戦前の1937年(昭和12年)に訪日し、当時の日本人はとても歓迎して彼女を尊敬して、視覚障碍者の活動が活発になった。戦後、GHQと日本政府が鍼灸師を廃止しようとところ、視覚障碍者のかたがたが「鍼灸師を守れ!」と活動してくれた。そうして戦後に鍼灸師という仕事が残ったのである。だから、僕が鍼灸師であるかぎり、視覚障碍者は恩人である。ラドクリフ大卒のおばあちゃんは、ヘレン・ケラーの同窓生であるから、大切に治療して差し上げます。