「西」に黄色で「金運アップ」
って、風水では有名な言葉ですね。
この小説の主人公、伊藤花はひたすらそれを信じて青春を駆け抜けたような気がします。
「なりたい自分になる」
お金を貯めて、仲間たちと擬似家族のように暮らしたい。花の夢はそれだけだったのに、
そして姉のような、母のような黄美子さんを幸せにしてあげたかった。
「黄色い家」
著 川上未映子〈中央公論社〉
2023年 P601
ざっくりストーリー
スナック勤めの母と二人暮らしの高校生の花は、母の友人である黄美子さんと出会い、彼女が経営する「れもん」で働きはじめる。
花が、家を出るためにファミレスで一生懸命バイトして稼いで貯めたお金を、母親の愛人に持ち逃げされ途方に暮れていた所に、黄美子さんから「一緒に来る?」と声を掛けられ、花は連いて行ったのだ。そのまま高校に通う意味も無くなり、いつしか花は退学になっていた。
二人で始めたスナック「れもん」は、地域のお馴染みさんや、時々尋ねて来て大金を落としてくれる、黄美子さんの友人で銀座の高級クラブで働き金持ちのパトロンがいる琴美さんのおかげで、そして黄美子さんの以前の仲間だった毎月まとまったお金を届けてくれるヨンスさんの存在などで、順調に軌道に乗って行った。
お店に人手が欲しいとき、近所のキャバクラで客引きをしていた、花と同世代の蘭と出会い、マックでのおしゃべりが楽しくて、花は初めて友人を持った。その頃、れもんに客として来店した、家庭に不満がある高校生の桃子とも親しくなり、4人は「れもん」で働きながら楽しい日々を過ごす。桃子はカラオケが上手で、桃子の歌うX(エックス)の曲に花は涙する。
そんなある日、「れもん」が火事に見舞われ、一瞬のうちに何もかもを失う。お店再開のめどなど皆無で、生活が困窮すると、花は共同生活を守るため、カード犯罪の「出し子」という危険な仕事に手を染めて行くのだが‥‥。
どこで引き返したらよかったのだろう?
花は働き者で仕事熱心なのだから、あのまま高校を卒業して就職して、普通の生活で良かったと私は思うのですよ。
本人が望めば、進学だって道はあったと思うのに、そうした環境に花はいなかったのですよね。
誰と出会うかで、人の人生は大きく左右されるのですね。生まれ育った環境はあるけれど、そこからだって自分の夢を叶えるチャンスは作れると思うのだけど、、
しかし、お金欲しさの犯罪は後を断たないし、彼女らを導く大人と関われなかったのが、「環境」なのかなぁ?
とても切ない物語で、1990年代の時代背景も懐かしく、一気に読みました。










