両家顔合わせをしたこの日の夜。
帰りの新幹線で初めてベビが胎動をした。

…?これって…胎動、かな?おねがい
嬉しいのに彼に伝えることすらできない空気。

彼と会話すらできない状況のまま、
悲しくて隣の席でクスンと泣いていると、
彼は見下すような目付きをし舌打ちをして
私を避けるように身を窓に寄せて寝だした。

ほとんどの時間を新幹線のデッキに立っていた。
とても隣に座っていられる空気感ではない。

昼間私の母親にニコニコしながら話してる同一人物なのかなと思うぐらい無視されている。

家に着くと寝ようとベッドに横になると、
彼は私に何か言ってきた。
その内…

暗い部屋で

何度も新聞を硬く握り直しながら
何度も何度も頭を殴ってくる

右腕でカバーしたら

イライラした様子で
新聞紙を置き
右手でグーで腕を殴ってきた。

カーテンから漏れる街灯りで灯される彼の顔は
笑いながら私を殴っている

「こうなった俺は止められないからな」

と笑いながら言ってきた。

次は顔をグーで数発殴られる。

やめて…と何度も伝える。
狂気の顔をした彼は、

首を絞めてきた。

私だけの体じゃない。
ベビがいる。
ベビが危険。

それまで無抵抗だった私は反射的に
右足で彼の腹部を蹴った。
玄関に這いつくばるように逃げる。

右足首を持たれた。

「どこにいくんだ!」
と言ってきた。

「私の身と赤ちゃんの身を守る為に家を出る」

「どこにいくんだよ!」

「私は○○と話をしたい。
 身を守る為に警察に行く。交番の前で話しをしよう」

手を離してきた。

「自分が悪い事してるってわかってるんだ…」

「俺を警察に付き出すつもりだな!」

「話しをしたいんだ。
 私と赤ちゃんと…○○の身を守る事にだってなるよ。警察の前で話しをしよう」

舌打ちをして彼はタバコを吸いにベランダに出た様子だった。

私は直ぐに家出をした。


パジャマのまま。
鞄だけ持って。

ドアを開けたら寒くて…
コートを取りに家に戻る。
彼は部屋にはいない。

狭い狭い6畳1間。
同棲8ヶ月。

この日で彼を見たのは最後になった。

パニックで、家を出た。

気付くと彼の実家に行く乗り換え改札を通っていた。

だけど、ご両親の電話番号を知らない。

私のスマホはキャリアメールが使えない機種に3ヶ月程前に機種変更していた。
何度もGmailで彼のお母さんのキャリアメールへ送るけど
リターンメールが返ってくる。

今でも私のGmailにはその日に送れなかった
下書きメールが保管されている。

もうダメだ…
どうしたらいいかわからない…
私は田舎にいる実母にラインをする。

「なぐられた」

この時点で婚約破棄は確定だ。
身籠の女性を殴ってくる男に嫁に行かせる親がいようか。

私の彼の最後の記憶は
狂気に狂った顔となった。

民事訴訟起こせば、裁判で会えるのかな。
でも会ったら私が壊れてしまいそうだ。