あいつは突然やって来る。
連休のある日。
夫の出張を見送った後、神保町の古本祭りへ出かけてブラついていると
珍しく携帯電話が震え出す。
着信名を見て『来たな』と直感。
『今あんた何しとるの?どこにおるの?』
久々に聞く友の名古屋弁に頬がふにっと緩む。
『神保町の古本祭りだがね。』
『なーんでそんなマニアなとこにおんの。ちょっと新宿まで来やぁて。』
『新宿ぅ?いやだわ~』
と、御苑辺りにいた彼女を強引にこちらへ呼び寄せる私。
一年振りの再会の挨拶もそこそこに、
彼女は私の姿をしげしげと見つめ
『ふーん、その格好じゃ新宿には来れんわなぁ。』
と腑に落ちたようすで含み笑い。
むむむ。
確かにご近所歩きのスタイルで出て来てしまった。
…手抜きは認めねばなるまい。
そんなゆるゆる主婦に対して、彼女を彩るのはミニスカートにハイヒール、
1万円したというネイルアート、フェミニンなヘアスタイル
有名ブランドのネックレスと、服に映える華やかな赤のバッグ…。
でもそんな装いにも無理はなく、いたって自然。
まだまだオンナをやっとるなぁ、と妙に感心してしまう.。
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名古屋では有名な大学の姉妹校だから進学に有利だと
高校は母や親戚に勧められるままにカトリック系の女子校へ。
それなりに裕福な家庭のお嬢さん達が多い中
個人情報保護もへったくれもない時代ゆえ、配られたクラス名簿には
親の名前と職業までがご丁寧に記載されていた。
私の保護者欄には母親の名前、職業欄は無職ゆえ空白。
『これ見て~。何でだろう?』
中学からエスカレーター式に進学してきた無垢な生徒が
不思議そうに囁く声が聞こえる。
『はぁ~。来るとこ間違ったなぁ…。』
入学早々ブルーな私に、声をかけてきてくれたのが彼女だった。
『ねぇ、聞いて聞いてっ♪』
と、いたずらっぽい笑顔でアイドルのモノマネを連発してくる。
(何だ??おかしなヤツ…。)
初めはそんな風に思ってたけど、
お互い相通ずるものを察知したのか
打ち解けるまでに時間はかからなかった。
(そーいえば彼女も社長令嬢だったっけ)。。
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そんな出会いから20年。
私は結婚して東京へ。
彼女は仕事のキャリアを積み(本意ではないらしいが)
独身で実家住まい。
会えば、気取らないざっくばらんなお喋りが続く。
独身時代は恋愛一色だったその内容にも
変化が表れてくるのは当然。
お互いの親兄弟の安否確認に始まり、同級生達のその後、仕事の内容、
景気の動向、オカシかった出来事、貧乏自慢?と
美容に健康エトセトラ…。
久しぶりに会えただけでも嬉しいのに、いっぱい話して笑ったら
心がすーーっと軽くなっていた。
このところは、腹の底から笑うなんてほとんどなかったから。。
今回の東京行きは『朝起きて突然ひらめいたもんで』と笑う彼女。
気がつくと私のテンションをぐいぐいと引っ張り上げている、
不思議な魅力を持った友の存在に感謝。
またいつでも、サプライズ上京しちゃってね♪
今度は、ミニスカートを穿いて会いに行ってやるんだから(/ω\)☆
