開幕直前に伝えたかったこと | NPO法人Ubdobe(ウブドベ)

開幕直前に伝えたかったこと

あと数時間で始まる。とうとう始まるんだ。

音楽やアートが大好きな僕は、ずっとUbdobeで障がいや疾患があってもクリエイターとして頑張るアーティストを応援するレーベルを運営したいと思っていた。
思ってはいたけど、アーティスト発掘からマネジメント、プロモーションに作品制作などの全てをまかないきれるスタッフもうちにはいないし、遠い未来の話だと諦めかけていた。
そんなある日、「試しに少し動かしてみよう」という感じで、『アーティスト募集』のニュースをウェブサイト上で公開してみた。
3日後、岐阜県在住の一人の女性から連絡があった。伊藤沙羅。
「私は10年ほど鬱病なのですが、ずっと詩を書いています。読んでみてもらえませんか?」と。
数点の作品を送ってもらい、いくつか読んでみた。
僕は詩のことは一切分からないが、なんか小説のような物語風な面白い詩だった。

数ヶ月後、名古屋で落ち合うことになった。
彼女は鬱病の薬を毎日服用しているせいで、顔色があまりよくなく、手にも震えが出ていた。
最初は目を見て話すこともままならない状況だったが、しばらくして意気投合。そばにいてくれたお母さんのおかげでもあったのだろう。
彼女は鬱病という病気と闘いながらもしっかりと自分のやりたい事、目指す方向性を認識していた。
目指すのはまさに、「ロック詩人」。ジム・モリソンに憧れ、シド・ヴィシャスに恋をする女、それが伊藤沙羅だった。
「展覧会をやろう」その日のうちに話が決まり、僕はすぐに会場探しをし始めた。
名古屋、栄を一日中歩きまくったが、なかなかいいところが見つからず。
そのへんにあるようなカフェやギャラリーでやるわけにはいかない。
伊藤沙羅がきっとそれは望んでいない。
そして会場を探すなかで偶然立ち寄った街「大須」でとうとう出会ってしまったのだ。
『大須SMASH HEAD』。なんとアメリカンやベスパなどのバイクの修理工場とカフェバーが一体化しているめちゃくちゃロックでパンクでオイルの匂いまでしてきそうなお店だ。
一目みて惚れた。
伊藤沙羅の詩や本人がかもし出すイメージとの相性が良すぎるようなお店だった。

東京に戻ってお店のオフィシャルサイトからメールを投稿した。
展覧会のコンセプト、なぜ障がいや疾患のあるクリエイターを所属させたいのか、どのような形態の展示をしたいのか、始めからかなりの長文での提案メールをした。
2日後にオーナーらしき人から返信があった。
「もろもろ、基本的にOKです。適当っぽい返事ですみませんが、適当ではありません。OKです。」
これだけだった。
なんて素敵なオーナーなんだ!!
「細かい話は抜きにして、面白そうだからやろうぜ!」ということだ。こういう人大好きだ!

舞い上がったまま自宅兼事務所のイスで展覧会の内容を考えていた。
詩の展覧会っていっても、ただ文字を白い紙に印刷して並べるだけでは殺風景だし、
詩の内容をもっとビジュアル化して伝えたいなーとか考えていた。
そんなことを考えながら部屋の壁に貼ってある友人の写真展示会ポスターが目に入った。

あれ?この写真、なんかSMASH HEADとも伊藤沙羅とも合うよねー、うん。合う合う。合うなー、マジで。
考えながらすでにその友人アシザワシュウにメールを打っていた。
俺「ロック詩人とのコラボレーションしませんか?」
シュウ「興味ある。面白そう!やるー!」

なんだなんだ?話が早いぞー、すべて。

場所と時期が決まり、コラボレーションまでできそうなフォトグラファーも出会えた。
あとは運営まわりをやるスタッフ。
すべてが恐いくらいにトントン拍子。
想いって伝わるもんですね。
ここで現れたのが、普段からプロジェクトマネジメントを手がける金ちゃんだった。
これまた優秀そのもの。どんどんどんどんプロジェクトをまわしてくれちゃう。

会場で販売する小冊子の制作、フライヤーやポスターの制作、広報現地スタッフの手配、プレスリリースなどすべてに関して完璧にこなし続けた。
現地スタッフの子たちも休みを使って大量のフライヤーを配布しまくってくれた。


すべてが順調に進んでいた矢先、僕がUbdobeという団体自体がいま危機に瀕していることを公開した。
自分が所属するレーベルが、所属から間もなく危機を向かえるなんて、そりゃー不安になりますよね。

沙羅は、落ちた。「もうやる気が出ない。死にたい。」そんな発言を繰り返した。
僕らはメールや電話で会話をした。
レーベルに所属することが目的だったのか?
展覧会をやることが目的だったのか?
この展覧会が終わったらどうしていくのか?
どうしていきたいのか?
そんなことを、あーでもないこうでもないと考えに考え尽くした時、
沙羅から長文のメールがきた。。。

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ゆーくへ

この前、ゆーく達と打ち合わせした時、ゆーくが、「沙羅の活動の範囲が例えば、海外とかまで及んだ場合、俺達じゃ管理しきれないから、他のとこ探した方がいい」って言ってた。それで、そういう事について自分なりに考えがあるから聞いて欲しいんだ。

ゆーくの話によく出てくる<違い>っていうことについてなんだけど、今は、外国の影響でそういう意識って薄れてきてるかもしれないけど、日本には昔から<和>の精神がある。
でも、これって、みんな同じカラーでユートピアってことじゃない、と私は思うんだ。
<八百万>っていう言葉があって色々な神様がいるみたいに、<違いがある>っていう所に秩序や節理があって、それで和してるっていうのが、古来からある和の意識なんじゃないかって思ってる。これからの時代、それぞれの国に、それぞれの役割があって、日本は、そういう本来の和の精神を世界に向けて発信していく役割が大きいって思う。Ubdobeは、そのモデルになると思うんだ。21世紀、世界にはUbdobeみたいな組織や活動が必要だと思うし、将来的には国内に限らず、海外にも支部ができていくと思う。そしたら、万が一、私が、海外に呼ばれるような事があっても、ずっとUbdobe所属で問題ないんじゃないか、って考えてる。

それとね、ゆーくのがカート・コバーンについては、よく知ってると思うけど、アングラ系のアーティストがメジャーになり過ぎた時、悲劇が起こる可能性が高い。ゆーくに送った『アイ・アム・ア・ヒーロー』って作品あったでしょ?あれはね、そういう事についてとか、自分への戒めとか、じりじりと殺されてったアングラ系のアーティストへの追悼の意味で書かれてる。私は、ずっとインディーズな感じでやってきたいし、その方が自分に合ってる。今年のKMA Fesのインタビューで、ゆーくが、「インディーズとメジャーのクロスオーバーをしたかった」って言ってた。今後、さらに、インディーズとメジャーの境界線はもっと曖昧になってくると思うんだ。表現活動を長くやっていきたかったら、
自分の軸が、インディーズ的なアングラ系だっていう事や、そういう特性、身の丈はわきまえてた方がいいと思ってる。

私、ずっと、「アーティストの収入だけで生活していかなきゃいけない」って思い込んでたんだ。でも、ゆーくやUbdobeの人達を見て、アーティストもやって、他に職業を持つのもクールじゃないかな、って思うようになったんだよ。何かの本にも書いてあったけど、詩人や作家にとって、「書けなくなる」っていう事実は、その人を死に追いやる威力を持ってる。だから、本当に理解して応援してくれる会社の社長さんに出会えたら、その会社に入って、そこの仕事もして、アーティストもやっていった方が、調子が悪くなったり、書けなくなったりする自分も許せると思う。これからの時代、アーティストも、その在り方とか、お金の稼ぎ方とか、今までとは、かなり変わってくると思ってるし、変わらざるを得ない。私、アーティストっていう職業を営利団体に所属してやりたいって、どうしても思えないんだ。若いアーティストは、よく海外に出たがるけど、私は、ゆーく達と別れなきゃいけないなら、海外に行く必要性はないと思ってる。ゆーく達とやれる範囲内でやっていければ、それで十分、幸せだから。

ゆーくのがよくわかってると思うけど、芸術は、アーティストが作品を作ってるだけじゃ成り立たない。やっぱり、そのアーティストや作品を、世の中に広める為にマネジメントをしてくれる人がいないと成り立たない。マネジメントをお願いできて、自分っていうアーティストや作品を深く理解して、愛情を注いでくれて、言葉で伝えられるもの以上を読み取ってくれる人とは、人生の中でそんなに沢山、出会えるもんじゃない。私は、本当に小さい時から不安定な子だったし、今後も草間弥生さんみたいに精神医療のサポートは受けていく必要性を感じる。だから、自分っていうアーティストが今後、世の中にどう広まっていったとしても、アーティストとして、ゆーくとは別れたくない。活動の規模を優先させるより、絶対、守らなきゃいけないものってあると思うから。


沙羅より

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こんなことを言ってくれる人がいるだろうか。
出会って間もないけど、もう僕たちは分かり合っていたのだ。


『一緒にやろう』


再度がっちり握手をして、また共に歩み始めた。
それからの沙羅の変貌ぶりは恐いくらいだ。
何度も何度も岐阜から名古屋のSMASH HEADへ通い、アシザワシュウの写真とのバランスの良い展示をどこにどのようにするのか?
どういう仕組みを組めば全ての作品をお客さんが見てくれるようになるか?
クリエイティブディレクターのような目線で展覧会を見つめ直して、どんどん仕組みを組んでいったのだ。
きっと東京にいる僕たちの負担を少しでも減らしたいという想いからの行動だろう。


2012年4月14日 15:59 いま、ここで展覧会の準備を進める伊藤沙羅、アシザワシュウ、金ちゃん、そしてオーナーさん。
みんないい顔してる。みんな楽しそう。
そんなみんなを見ている僕が一番楽しい気がしてくる。
最高だね。みんな最高です。


始まるよ、とうとう始まるよ。
『伊藤沙羅 ことばの展覧会』in 大須SMASH HEAD、始まるよ。
http://socialfunk.jp/lab/


みんな、応援よろしく。

ウブドべ代表