令和4年度の最低賃金が決まり、山口県は888円(令和4年10月13日発効)とされました。
最低賃金とは企業が従業員に対して最低限支払わなければならない賃金で、毎年、国の審議会で引き上げ額の目安を示し、それをもとに都道府県ごとに決められます。今回の引き上げ額は、最低賃金が時給で示されるようになった2002年度以降、最大となりました。
全国の平均時給は2021年度より31円高い961円となり、政府は2025年を目途に時給全国平均1,000円以上を目指す方針を示しています。大幅な引き上げが続いている日本の最低賃金ですが、世界と比べるとどうなのでしょうか?
2021年内閣府データによれば、主要先進国の最低賃金時給を日本円に換算すると、
フランス:1,302円
イギリス:1,302円
ドイツ :1,206円
アメリカ(州平均):1,060円となっており、桁が違っています。
2020年度版の「OECD(経済協力開発機構)」が発表している世界の最低賃金ランキングでは、日本は14位(8.2ドル:時給換算)となり、欧州各国や隣の韓国(8.9ドル)よりも低くなっています。
日本企業には潤沢な内部留保金があるのに、それが従業員の給与に反映されないという指摘もありますが、日本では従業員の給与コストが重い、つまり、一度上げたら労働者保護の観点から、下げることが難しいという、独特の事情も影響しているようです。
今回の引き上げに対しても、労働者側からは物価の上昇に見合わない、地域の差がありすぎるなど不満の声も多かったようですが、コロナ禍で厳しい中、特に中小企業の経営者にとっては最低賃金引き上げは頭の痛い問題かもしれません。
しかし、人手不足が深刻な日本にとって、単に安い労働力を求めるのは危険であるとも思えます。最低賃金とその国の生産性の間の相関係数は84.4%と非常に高く、最低賃金が高い国ほど生産性が高いことが、世界中のさまざまな研究機関から発表されています。
また、働く側の意識の変化も必要です。ただ会社に行けば給料がもらえるではなく、収益を生む提案ができるとか、企業利益に貢献できるかとか、自己の能力を高め、発揮することが求められる時代になってきていると感じます。
日本の生産性を上げて行くには、労使双方の意識の改革が問われている時なのかもしれません。
なお、最低賃金の対象となる賃金は、毎月支払われる基本的な賃金です。
具体的には、実際に支払われる賃金から次の賃金を除外したものが最低賃金の対象となります。
1. 精皆勤手当、通勤手当、家族手当
2. 1ヶ月を超える期間ごとに支払われる賃金(賞与など)
3. 臨時に支払われる賃金(結婚手当など)
4. 時間外労働・深夜労働・休日労働に対する賃金
なお、賃金の支払に関して、例えば労働契約により最低賃金より低い賃金を定めたとしても、その部分は最低賃金法により無効となり、最低賃金が契約内容となります。