今回は経審(経営事項審査)のお話です
経審とは公共工事の入札に参加する、建設業許可業者が必ず受けなければならない審査です。建設業者の経営規模(完成工事高や自己資本額)や、経営状況などの客観的事項について審査(点数が付きます)をします。
当事務所では、お客様に最新の情報や評点アップについて様々なアドバイスをしています。また経審結果のシミュレーション(点数の試算)も行っています。
今回は、そのシミュレーションを行っていく中で、気になった点をご紹介します。
1. 経審を申請するうえで、申請する側が任意で選択できる項目がいくつかあります。その中で完成工事高の評点(X1)については・・・
「直前2年間の平均」または
「直前3年間の平均」のどちらかを選択できるようになっています。(激変緩和措置といいます)
単純な話ですが、平均の完成工事高は高ければ高いほど点数も高くなります。急激に売上が減少した場合は、3年平均を選択した方が平均工事高は高くなります。反対に売上が右肩上がりの場合では2年平均の方が平均工事高は高くなります。
2. 他の審査事項の中に社会性等(W)を評価する項目があります。10項目ほどありますが、その中に建設業の経理の状況(W5)というものがあります。これは自社の職員の内、公認会計士や税理士、1・2級登録経理試験合格者について加点がされるものです。
① まず以下の算式から数値を出します。
公認会計士等数値 = 公認会計士等の数 × 1 + 登録経理試験2級合格者の数 × 0.4
② ①で算出した数値の合計を以下の表にあてはめます。
※完成工事高に対し、求められる経理能力が違うことを表しています。
【ここから本題に入ります!!】
以下のような条件のもとシミュレーションしました。
《完成工事高を2年平均した場合》
《完成工事高を3年平均した場合》
並べて見るとわかりやすいのですが、実は平均完成工事高が高い2年平均より、3年平均のほうがP点(評点結果)は高くなっています。何故かというと確かに完成工事高の平均は2年平均の方が高いため年間平均完成工事高の評点(X1)は当然2年平均の方が高くなっています。
しかし、この年間平均完成工事高の数値は上で説明しました、社会性等(W5)でも使います。
今回のケースでは2年平均か、3年平均かで評点テーブルが・・・
「1億円未満」の行か「1億円~10億円未満」の行か、という点で判定が変わります。2級登録経理士1人では「0.4」の数値になり、評点テーブルに当てはめるとそれぞれの点数が以下のように求められます。
これにより経理の状況(W5)としては、完成工事高は3年平均を選んだ方が高くなることがわかります。
今回のシミュレーションでは、完成工事高の評点(X1)を高くするより、経理の状況(W5)を重視して平均完成工事高を低く選択した方が総合的には経審の点数(P点)が高いという結論になりました。
単純に完成工事高が高い方がP点も高くなるという思い込みでは、誤った結果になることもあります。その都度、しっかりとしたシミュレーションをすることが大切です。