台風が過ぎさり秋風が心地よい季節となってきました。河野会計事務所では税務・会計とは別に経営状況分析センター西日本という事業所を併設しています。今回はこちらの分析センターより10月から改正となる建設業法についての情報をお伝えします。

 

いよいよ10月1日より、改正建設業法が施行されます。今回の改正法の目的は、まず、建設業界における長時間労働を是正するための働き方改革の促進があげられます。また、建設現場における人材が高齢化し、若者の建設業離れが顕在化する中で、人材を有効活用し、次世代の担い手育成も喫緊の課題です。そこで建設現場の生産性向上を念頭に置いた改正もいくつかなされています。

 

改正のポイントをいくつかご紹介します

1.    工期の適正化

注文者に対し、「著しく短い工期」による請負工事契約を禁止します。「著しく短い工期」が何を指すかについては、中央建設業審議会が作成する工期に関する基準に基づき判断されることとなります。違反者に対しては、国交省大臣から是正勧告が実施されます。勧告等の対象となる建設工事の請負代金の額の下限は、500万円(建築一式工事にあっては1,500万円)です。

 

2.    技術者に対する規制の合理化

旧法では、建設工事の請負代金の額が3,500万円(建築一式にあっては7,000万円)以上のときは、監理技術者は現場に専任の者でなければならないとされています。改正法では、監理技術者を補佐する者として「技士補」を創設し、これを専任で置いた場合は、2現場の兼任が可能となります。この他、下請の主任技術者の配置義務も見直され、一定の工事については、当事者間で、一次下請の主任技術者が再下請の技術上の施工管理を行う旨の合意があれば、再下請先の主任技術者の配置は不要となります。

 

3.    許可要件である経営業務管理者の規制緩和と社会保険加入義務化

旧法では、経営業務の管理責任者としての要件は、「建設業の経営に関する経験を5年以上有している者」が常勤の役員として置かれていることでした。個人の経験によってその能力を担保していましたが、改正法では、事業者全体として適切な経営管理責任体制を有しているかどうかという視点で経管要件が判断されます。また、社会保険への加入も新たに許可要件となり、健康保険、厚生年金保険、雇用保険について、建設業者の加入義務が課されている保険に加入していなければなりません。

 

4.   合併、事業譲渡、相続に関する法整備 

旧法では、建設業者が合併や事業の譲渡を行った場合、新たに建設業許可を得る必要があり、その間に建設業の営むことができない不利益が生じていました。改正法では、事前の認可を得ることで、建設業許可を承継できようになります。また、個人事業主の場合も同様に、個人事業主の死後一定期間内に認可を申請すれば、許可不許可の通知があるまでの間、業務を継続できるようになります。

 

 なお、2021年には、この改正に続く形で技術検定見直しの施行がなされます。さらに2022年には、経審許可手続きにおける電子化の構想があがっており、建設業を取り巻く制度が大きく大きく変わっていくものと思われます。