2021年の 立春の頃、
ふとしたきっかけで
孫ちゃん に出逢った。
孫ちゃんは女の子なので、
名は「悟空」ではない。
でも、
觔斗雲(きんとんうん)のような
黒い健康マット に乗って
日本中を飛び回っている様子は
さながら 悟空 のようだった。
出逢って間もない頃・・・
僕は孫ちゃんからある小箱を渡された。
僕は まるで
桃太郎からきび団子をもらう犬
のように 素直に それを受け取った。
「試供品」という封印を
恭しく外し、結界を解くと
遠くで 小さく
鈴の音 が聞こえた。
箱の中にあった それは
黒く、でも微かな 光 を放つ
不思議な小瓶だった。
ラベルには
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colloidal platinum
Since 1992
と記載されている。
コロイド状 の プラチナ...?
1992年といえば
ちょうど僕の
魂の旅が 始まった年だったよな。
何故か とても
心惹かれるものを感じた事を覚えている。
ともあれ・・・
そんなきっかけから
僕らの 不思議な旅 は
始まったのだ。
薄々 気づいてはいたが・・・
孫ちゃんは ある重大なミッションを託されているようだった。
・・・いや、
託されていた、
というより
みずから 進んで
背負っていた のかもしれない。
でも、彼女は 僕を警戒してか
そのことに触れるのを
その頃は 避けているようだった。
別段、僕の方も
そのことについて、
深く聞き出そうとも思わなかった。
雪に閉ざされた山形の厳しい冬を
いく年も乗り越え生き抜いて来た
芯の強いサクランボ娘の口を割らせるのは
並大抵の事では無いことぐらいは
チェリーボーイの僕でも解っているつもりだった。
ただ、正直に告白すれば・・・
当時の僕は、
そのミッションに対して興味津々で、
早く その内容を知りたくて仕方なかった。
なぜなら・・・
彼女が背負うものが何であれ、
そこにあるのは
北朝鮮のスパイが背負わされた
暗い「影」の様なものではなく
明らかに それとは真逆の
初代ウルトラマンの 科学特捜隊員 が背負っていた
明るい「 光 」なんだと
何故か 直感していたからなのだろう。
ちなみにウルトラマンの故郷「光の国」は
M78星雲にあるという設定になっている。
オリオン座に実在する星雲だが、
「78」を原子番号にもつ物質が 「白金」
すなわち、「プラチナ」 である事は
単なる偶然 なのだろうか?
やがて・・・
そんな僕の想いを見抜いてか
あるいは
僕との間に信頼関係を見出してか・・・
ある日、孫ちゃんは 僕に
ある提案を持ちかけてきた。
東京でも
桜の蕾が膨らみかけた頃だった。
ヒデさん・・・
三蔵姐さん に逢ってみない?
ん ?
さんぞう・・ねえさん・・?
三蔵姐さん ??
間髪を入れず・・・
僕の脳裏には
テレビドラマ西遊記で三蔵法師を演じ
今も 人々の心の中に
永遠の若さと美貌を留め続ける
夏目雅子 の姿がありありと浮かんでいた。
三蔵姐さんって
どんな人なんだろ?
三蔵と言うと 僕らは
すぐに西遊記の三蔵法師、
つまり玄奘三蔵法師を思いだすが、
そもそも、三蔵とは
仏教の聖典の3分類
経蔵、律蔵、論蔵に精通する人
つまり
お釈迦様の教えの断片をかき集め
解釈、研究するエキスパート
そんな偉い坊さんに与えられる
尊称だったはずだ。
言ってみれば、
自己探求、世界救済、生死超越を目指した、
「人間 釈尊」の教えの
真摯な研究者 であり、
真の理解者 であり、
さらには
それを世に拡める
アンバサダー的な存在
そんなふうに
僕は解釈していた。
そんな輝かしい称号を与えられた
玄奘三蔵とは
西遊記でも知られる通り、
唐時代の中国から
はるばるインドへの
苦難に満ちた旅を決行し、
釈尊の教えへの
深淵な洞察、理解と共に、
万巻の経典を持ち帰った。
彼のすごいのは、
それが旅の終わりではなく、
それからさらに
その膨大な経典の教えが
全ての民衆に行き渡るよう
残りの人生のすべてを
持ち帰った膨大な経典の
翻訳に捧げた点だろう。
僕らが現在、
観光客のごった返す古寺の一室で
しおらしく
般若心経などを写経し、
救われたような気分に浸れるのも
すべて 玄奘三蔵法師様の
おかげに他ならない。
そして、面白いのは、
彼は 危険極まりないインドへの旅を
商人たちの隊列にまぎれて遂行している。
当時は シルクロードの交易も盛んで、
それがもっとも安全な手段だったのかも知れないが・・・
物質的な経済活動に
血まなこになる
商人の隊列にまぎれ
精神的な求道精神に
血潮をたぎらせながら
黙々と旅を続ける三蔵法師
生死の危険と常に隣り合わせの旅の果てに
商人たちは
莫大な富と財を持ち帰り
三蔵法師は
かけがえのない
知恵と慈悲の結晶を持ち帰った
彼が運んだのは
モノやカネではなく
純粋な知恵 と
崇高な精神 なのだ。
・・・この点は
のちのち、この物語で
重要な意味を持つことになる。
三蔵・・姐さん・・・
いったい どんな人なんだろ?
もしかして
人々にとって重大で
とても重要な 何かを
求め、受け取り、持ち帰り、
さらにそれを
理解し、噛み砕き・・・
そして、拡めようとしている
そんな人なんじゃないだろうか?
もはや
僕の好奇心は
マックスに達していた。
「 もちろん! 」
はるか彼方の 西方浄土を
うっとりと仰ぎ見ながら
僕は 即座に 応えていた。
どこかで 遠く・・・
また
あの 鈴の音 が聞こえた。
第2章
「三蔵姐さんとの邂逅」 に続く
最後まで読んでくださり、ありがとうございました💓


