光と 音と 鈴の音 と  〜 プラチナ sai 遊記 〜 -21ページ目

光と 音と 鈴の音 と  〜 プラチナ sai 遊記 〜

2021年の立春、ある出逢いをきっかけに僕らの不思議な旅が始まった。謎は謎を呼び、幾多の試練が立ちはだかる。預言が示す僕らのミッションは過酷で、ゴールは遥か遠くに霞んで見えない。果たして僕らは辿り着けるのか?

 

 

 

指定された その日

 

早めに東京入りした僕は

 

朝から 皇居外苑をくるくると 

 

彷徨っていた。

 

 

4月下旬とはいえ、

日差しは眩しく

 

 

サツキの花を揺らす初夏の風は

お堀の 水の匂いがした。

 

 

途中、国立近代美術館に立ち寄り

「あやしい絵展」 を観た。

 

 

 

 

 

展示されている絵画は

もちろん

確かにどれもみな怪しかったが、

 

うすら笑いを浮かべ

それに見入る僕の方が

ずっと怪しいことに気付き

 

背筋が凍りかけた。

 

 

 

日が少し傾いたころ、

半蔵門で孫ちゃんと落ち合った。

 

ドトールのアイスコーヒーで

喉の渇きを潤してから、

 

僕らは三蔵姐さんのオフィスに向かった。

 

 

三蔵姐さんは

例の sai というプラチナコロイドの

販売を手がける 崙堂株式会社 の

代表取締役を務めているという。

 

 

三蔵姐さんのオフィス

千鳥ヶ淵を見渡せる

最高のロケーションの一画にあった。

 

 

孫ちゃんが 到着した由を

携帯で伝えると、

とても感じのいいスタッフの女性が出迎えてくれた。

 

 

白亜のシンプルな内装

 

 

応接用のテーブルセット以外は

全て壁面収納され 

 

 

その壁面を 間接照明が

優しく照らす。

 

 

一枚ガラスの壁の向こうには

千鳥ヶ淵の新緑が燃えていた。

 

 

オフィスというよりは

 

 

宇宙船の内部にいる様な、

 

もしくは

 

 

シルクのコクーン

優しく包まれている様な

 

そんな錯覚に陥いる。

 

 

スタイリッシュでありながら、

なにか有機的な温もりを感じる

 

 

極めて上質な空間だった。

 

 

中空に釣られた

透明なオブジェの中で

ゆったりと たゆたう

プラチナコロイドの黒い波

 

その安らかな揺らぎだけが、

 

時空を静かに行き来していた。

 

 

 

 

 

「到着されました!」

 

 

スタッフの女性の声がきこえた。

 

 

 

聞けば、福山、京都の

西国巡礼を早めに切り上げ

 

帰京後すぐに

タクシーで駆けつけてくださったそう。

 

 

 

そんな慌ただしさなど

微塵も感じさせない優雅さで、

 

 

三蔵姐さんは微笑みをたたえ、

静かに立っていた。

 

 

 

白いタイトなスーツの背筋は

天に向かってスッと伸び、

 

凛とした中にも、

力みのない余裕を感じさせる

都会的な 麗人 だった。

 

 

うながされて 席に着くと、

初対面の挨拶をすませた。

 

 

 

品格をたたえた美女というのは

こちらも身構えてしまって

話づらくなるのが常だ。

 

でも

三蔵姐さんは違った

 

気さくで、オープンで、

茶目っ気に溢れていた。

 

 

 

女講談師顔負けの話術と、

躍動感のある完璧な関西弁。

 

 

 

浅草演芸場 と なんば花月

どちらでも通用するなと思った。

 

 

おかげでこちらも気兼ねせず、

 

初めて会ったとは思えない位

話ははずんだ。

 

 

 

 

 

お互いの経歴や現状はもちろん、

 

プラチナコロイドsai の事や

 

それにまつわる様々なエピソード

 

未来に向けてのあるプロジェクトの概要・・・

 

 

三蔵姐さんが 拡めたいのは

 

モノでははく、ある想い であり

 

それは 僕らの未来に対する

 

あるビジョンに 基づいていることも

 

なんとなく 理解できた。

 

三蔵姐さんは、たしかに

 

あの 玄奘三蔵の ように

 

人々には まだ知られていない

 

未来を開く何か

 

世に拡めようとしているのだ。

 

 

 

色んな話が出来たし、

 

色んな話が聴けた。

 

 

楽しい語らいも終盤にさしかかった時だった。

 

 

三蔵姐さんの流暢な関西弁に聞き惚れるうちに、

 

 

ぼくは軽いトランス状態に入っていた。

 

 

 

とても短い夢

 

見たのかもしれない

 

 

 

シャンシャンシャンシャン・・・

 

振り鳴らす鈴の音

 

燃え盛る松明

 

神々の歓声

 

立ち込める神酒の香り

 

 

見上げる夜空の星々は

すっかり輝きを失っていた。

 

車座に取り囲む神々の

円陣の中央には

しめ縄を張り巡らせた

大きな石の舞台があった

 

 

 

その上で、、、

 

三蔵姐さん

唄い 踊っていた。

 

 

熱狂的な神々の歓声に

魅惑的な 媚態で応え、

 

夢見心地の神々を

 

煽(あお)り、昂(たかぶ)らせ、

そして 導く・・・

 

 

エネルギー渦巻く

巨大なボルテックスの中

 

三蔵姐さん

我を忘れ

 

 

しかし

我を超えた

大我の意思に従い

 

 

神々全てのエネルギーを

まとめ上げ

 

 

より大きなうねりを創り出すために

舞い続けていた。

 

 

しかし

 

 

躍動する肢体とはうらはらに

 

三蔵姐さんの眼差しは

 

静かに、

 

しかし 矢のような確かさで

 

闇の向こうに向けられていた。

 

 

 

三蔵姐さんの視線の先を目で追うと、

 

 

そこには

闇のなかに漏れ出す

 

 

一条の 微かながあった

 

 

そこにもやはり

しめ縄が張り巡らされていた。

 

 

それは

とてつもなく

巨大な 岩戸 だった。

 

 

わずかに開いた隙間から

漏れ出す 眩い光の帯

 

 

さらに昂る

神々の狂宴のなかで

 

少しづつだが 

その幅を広げているように見えた。

 

 

傍らには

 

重い岩戸に手をかけ

 

渾身の力で開けようとする

 

屈強な男神の逞しい姿も

ぼんやり見える。

 

 

闇を追い払う光は

 

確実に 

 

その強さを増し始めていた。

 

 

夢の中で

僕は確信した。

 

 

 

アメノウズメノミコト・・・

 

 

 

そうなんだ!

 

 

三蔵姐さんとは・・・

 

 

神話の中の 「岩戸開き」

 

の一節に登場する、あの

 

天宇受売尊〔あめのうずめのみこと〕

 

なのだ!

 

 

岩戸の奥深く

身を隠してしまった光の女神を

 

再び世界に呼び戻すために

 

なす術を失った神々の前で

 

我が身の全てを投げ出し

 

全身全霊のパフォーマンスに燃え尽きた

 

あの 

 

美しく 健気(けなげ)な

 

献身の女神 だったのだ。

 

 

 

 

 

不意に視界が潤み始めた

 

 

僕は

溢れそうになる涙を

必死にこらえた

 

 

でも

 

僕の頭の中を

強烈なイマージュが

容赦なく駆け巡る

 

 

三蔵姐さん は

語り、唄い、踊り続ける

 

 

 

なんのために?

 

 

神々の眠りを覚まし

神々を勇気づけ

神々の声を集め

神々の想いを導き

 

 

失なわれた大いなる光

この世に取り戻すために

 

 

 

そして

 

その想いが成就する時

 

世界中に

 

夜明けを告げる

 

清らかな鈴の音が響き渡り

 

星々は失った光を取り戻す

 

 

 

再び光に満たされ始めた地上では

 

 

鈴の音に導かれた

百万もの人々が再会を果たし

 

漆黒の美酒で 祝杯を挙げる

 

 

 

人々の身体と魂を潤す

漆黒の美酒は

 

やがて

 

白金の光となって

 

彼らの身体の全ての構成要素を

癒やし 浄化し 輝かせる

 

 

さらには

 

それは

 

 

妙なる音を放ち

一つの言霊を

奏で始める

 

 

 

響き渡る言霊

世界を覆い尽くす

聖なるシールドとなって

世界を闇から遠ざける

 

 

 

そう・・・

 

そして

 

そのようにして

 

 

世界は 光を

取り戻すんだ

 

僕らは 未来を

取り返すんだ。

 

 

 

 

 

・・・それは

 

刹那の間の夢だった。

 

 

 

しかし 

 

その夢見の間に

 

駆け抜けていった壮大な物語は

 

その後も

 

僕の胸に深く刻まれる事になる。

 

 

 

それにしても・・・

 

 

時間ってなんなのか?

 

 

 

ぼくは

時々わからなくなる。

 

 

あの日は

 

 

三蔵姐さんとの

2時間を超える楽しい語らいが

 

一瞬のように過ぎていて

 

 

一刹那のまどろみの中で

 

僕は 永遠にも似た

壮大な物語を見ていた。

 

 

 

ともあれ 孫ちゃんのおかげで

三蔵姐さん との

素晴らしい邂逅を果たす事ができた。

 

 

 

三蔵姐さんとの語らいの中で

 

前から気になっていた

孫ちゃんが背負う

ミッションの全容も

朧げながら 

解ってきた気がする。

 

 

その詳しい内容は

この後の章で

追い追い話す事にしよう。

 

 

 

帰り際、

 

三蔵姐さんは

僕らにお土産を手渡してくれた。

 

美味しそうなシュークリームだった。

 

 

 

オフィスを出た後、

自宅へ向かう孫ちゃんと別れ、

 

僕は半蔵門のホテルにチェックインした。

 

 

 

部屋に入ると

何かとても心地よい疲れを感じ、

 

窓辺のソファーに

深々と身を投げ出した。

 

 

まるで壮大な大作映画を見終わった時

のような感覚だった。

 

 

ずいぶん長い間

 

僕は 窓の外を

 

ぼんやりと見ていた。

 

 

ふと、視界の隅に

先程、三蔵姐さんから手渡された

お土産のシュークリームが映った。

 

 

シュークリーム・・・

シュークリーム・・・

 

シュープリーム・・・

 

ん?

 

シュープリーム?!

 

supreme って

 

究極・至高・至上

 

って意味だよな。

 

 

これって 三蔵姐さんが

僕や孫ちゃんに託してくれた

メッセージのような気がした

 

 

・・・って、

もちろんこれは

ダジャレ好きの僕の妄想だが・・・笑

 

 

そもそも 今日の昼間

まどろみの中で見たビジョン自体、

 

あくまで僕の勝手な妄想であり、

 

当然ながら、

 

実在の三蔵姐さんや

孫ちゃんとは

全く関係ない。

 

 

昭和30年代に生まれた男の子は

 

セルロイドのお面を被り、

 

風呂敷のマントをまとい、

 

新聞紙をまるめた刀を腰に差すだけで、

 

即座にヒーローになれたのだ!

 

 

 

今もその魂は生きている。

 

過大妄想癖と共に生きている。

 

 

 

思えば、僕は

 

妄想と共に生きてきた

 

 

本気でやれば何でもできる

という妄想

 

 

人間は いつか 人間を超えられる

という妄想

 

 

不可能など ただの妄想だ

という妄想

 

 

そんな妄想たちが、

いつも僕の原動力だったし、

これからもそうだろう。

 

 

全ては

妄想なのだ

 

 

 

世界は

人間の感覚器官と

認識能力の不完全さがでっち上げた

壮大なるファンタジーなのだ。

 

 

量子学者からみれば

宇宙は

明滅する粒子、

もしくは波動の海に過ぎない。

 

 

いや、それさえも

妄想なのかも知れない。

 

さらには

痛みや、苦しみや、悲しみ

それさえも

妄想なのかも知れない。

 

 

玄奘三蔵が持ち帰った経典にも

記されていたと思う。

 

 

 

 

とりとめのない思考が

頭の中に去来していた。

 

 

 

気がつけば

 

すっかり日は暮れていて

 

部屋の内部を映し始めたガラス窓の中に

ニヤリとうすら笑いを浮かべる僕がいた。

 

 

キモいっ!

 

 

その構図こそが

まさに、あやしい絵 だった。

 

 

 

しかし、

 

始まってしまったのだ。

 

 

僕の妄想の爆走が!

 

 

もう、引き返せないし、

 

もう、誰も止める事は出来ないのだ。

 

 

救国の神託を受けたという妄想から、

100年戦争を勝利に導くという

トンデモない事をやらかした、

あの、15世紀フランスの

妄想暴走ギャルのように・・・

 

 

 

 

 

 

 

そして

 

シュークリームに手を延ばし、

「シャイニング」のジャック・ニコルソンの様に

かぶりつきながら

 

 

僕は独り言を呟いていた。

 

 

三蔵姐さん、了解です!

 

シュープリームなゴールを目指して

 

シュープリームな道を探しますね!

 

 

 

姐さん!

 

 

任しておくんなせぇ

 

 

姐さんが天宇受売尊なら

 

 

あっしは 天岩戸をこじ開けた

 

天之手力男神(あめのたじからおのかみ)でござんす!

 

 

 

そんな

 

頼まれもしない使命 を勝手に背負い、

 

一人、熱く こころを燃やす。

 

 

 

そんな僕のつぶやきに応えるように

 

 

 

遠くから 音が聞こえた。

 

 

 

それは

 

あの 鈴の音

ではなく・・

 

 

 

映画トップガンのテーマ曲

 

『Danger Zone だった。

 

 

 

 

 

 

第3章 『天城越え・・・愛のbecks(手招き)』 に続く

 

 

最後まで読んでいただき

ありがとうございます💓