最終章 「白金居士」 | 光と 音と 鈴の音 と  〜 プラチナ sai 遊記 〜

光と 音と 鈴の音 と  〜 プラチナ sai 遊記 〜

2021年の立春、ある出逢いをきっかけに僕らの不思議な旅が始まった。謎は謎を呼び、幾多の試練が立ちはだかる。預言が示す僕らのミッションは過酷で、ゴールは遥か遠くに霞んで見えない。果たして僕らは辿り着けるのか?

 

 

 

 

八重洲中央口で タクシーを拾った。

 

 

 

左手に見える 国会議事堂を眺めながら、

 

 

 

僕は

 

少し、不安を 感じていた。

 

 

 

僕が受け取った 

 

白金居士に関する情報は、

 

果たして 確か なのか?

 

 

 

江戸っ子なまりで、

 

やたらと話しかけてくる

 

運転手が、多少煩わしかった。

 

 

 

江戸っ子なまり は 嫌いではないが、

 

 

その運転手の話は、

 

とにかく、聞き取りづらかった。

 

 

 

100円 を しゃくえん

 

広い を しろい

 

 

 

とにかく、「ハ行」と「サ行」の区別 

 

極めて 曖昧なのだ。

 

 

 

 

もしや?・・・

 

 

 

 

僕に saiちゃんや プラチナに関する情報を

 

与えてくれたのは、全て 東京在住か、

 

 

あるいは その近辺の人達だった。

 

 

 

思い返してみれば

 

 

「白金居士」の名も、口頭で 早口に

 

語られたものを 聞いただけなのだ。

 

 

 

聞こえたままの

 

「はっきんこじ」という 発音を

 

 

 

僕は、なんの疑いもなく

 

「白金居士」

 

と頭の中で変換していたのだ。

 

 

 

それが、急に 気になり始めたのだ。

 

 

 

これから会う 初めての人、

 

しかも要人に対して、

 

 

 

呼び名を間違えるほどの失礼はない。

 

 

僕は、江戸っ子なまりを考慮にいれて、

 

 

大急ぎで、

 

 

間違える可能性のある文字列

 

思い浮かべてみた。

 

 

 

「ハ行」と「サ行」の

 

区別の曖昧さを考えれば、

 

 

2つの可能性が浮上した。

 

 

 

それは・・・

 

 

 

「はっきんこじ」ではなく、

 

 

 

「百均誇示」 ひゃっきん こじ

 

 

もしくは

 

 

 

「借金孤児」 しゃっきん こじ

 

 

 

 

 

いやいや、

 

それは無いだろう!

 

 

 

かりそめにも、

 

 

 

あれだけの人望を集める人物が

 

そんな異名で呼ばれる事などありえない。

 

 

 

僕はひと安堵したが、一応

 

 

「白金居士」という 二人称は

 

封印し、使わぬ方が無難、

 

 

と 結論が出たタイミングで、

 

タクシーは 墓苑入口 の交差点に停車した。

 

 

 

えば、この白金居士に対して、

 

あれこれと

 

 

詮索してみた事もあった。

 

 

 

 

例えば。その素性。

 

 

忍びの頭目である事は、

 

もう、疑いようはなかった。

 

 

先日訪れた、伊豆の研究所の

 

クロスロード博士も、

 

 

クロスした道と、

 

ビーカーの中の回転を考え合わせれば、

 

素性は明らかだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

丸十字の紋章を持つ

 

島津藩の お抱え忍者、

 

「山くぐり衆」と見て間違いないだろう。

 

 

そして

 

 

白金居士の素性は、

 

拍子抜けするほどの

 

安易さで特定する事が出来た。

 

 

saiちゃん と言う名。

 

 

その名の由来は、おそらく、

 

霧隠れのサイちゃん

 

 

すなわち 

 

真田十勇士の一人、

 

 

霧隠れ才蔵 の名に

 

由来するに違いない。

 

 

とすれば、

 

白金居士の素性も、

 

自ずと知れている。

 

 

 

 

しかし、もう、

 

そんな事さえ、

 

どうでもいいのだ。

 

 

 

伊達家黒脛巾組の 孫ちゃん、

 

伊賀、服部半蔵ゆかりの 三蔵姐さん、

 

島津藩お抱えの 山くぐり衆、

クロスロード博士、

 

そして、彼らを束ねる

 

霧隠れ才蔵 の末裔、白金居士。

 

 

 

 

彼らを背後で操る、本当の黒幕 の存在を、

 

僕は すでに探り当てていたのだ。

 

 

 

それは、奇跡とも言える偶然だった。

 

 

 

僕が、伊豆から帰った後に

 

仕事で訪れた、会津若松での事だった。

 

 

 

僕は、仕事の空き時間に

 

何気なく近所の資料館に立ち寄ってみた。

 

 

 

 

 

 

 

 

野口英世青春館 

 

という小さな資料館だった。

 

 

僕は、そこで 

 

驚くべきものに遭遇することになる。

 

 

 

資料館の入り口を入ったばかりの、

 

 

右手の壁に掲げられた額の前で、

 

 

 

僕は、電撃に打たれたように 

 

硬直し、

 

立ち尽くした。

 

 

 

そこには、

 

 

野口英世直筆の書

 

飾られていた。

 

 

 

 

忍 耐

 

 

 

「 忍びの みんなー 、 耐えてけろ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

僕は全ての意味を 理解した。

 

 

 

・・・そうだったんだ。

 

 

 

僕が出会ってきた 忍びの者たち、とは

 

 

今は亡き、

 

野口英世博士の 悲願 と 遺志 

 

を託された者達 だったのだ。

 

 

 

僕の、彼らに対する疑念は

 

すっかり氷解し、

 

 

僕は、それ以来、

 

 

 

野口英世博士の

 

果たせなかった夢を背負い、

 

 

博士の悲願だった

 

プラチナコロイド普及に

 

忍耐 強く取り組む 彼らに、

 

敬意さえ払い始めていたのだ。

 

 

 

 

そんな経緯から、

 

 

白金居士と 直接 面会することに対して

 

以前のような 緊張感は なくなっていた。

 

 

なので、

 

今回の 面会 にあたり

 

バッグの中に

 

護身用 の クナイ や

 

逃走用 の マキビシ を

 

忍ばせることも しなかった。

 

 

 

むしろ

 

楽しみで 仕方なかった。

 

 

到着したビルの

 

エントランスの階段を上がり、

 

 

ガラスの扉を開けると

 

 

 

正面に エレベーターがあった。

 

 

 

以前、ここを訪れ、

 

三蔵姐さんと初めて会った時は

 

 

1階のオフィスだった。

 

 

 

 

今回の面会は、

 

 

移転したばかりの 

 

6階にある新しいオフィスで、と

 

 

案内を受けていた。

 

 

 

 

僕は、エレベーターに乗り、

 

6F のボタンを押した。

 

 

 

エレベーターは、

 

静かに上昇を始め、

 

 

 

やがて

 

 

6階に 到着した。

 

 

 

ゆっくりと 扉が開く。

 

 

まるで、

 

 

野外のような 眩しい光が

 

目に 飛び込んで来た。

 

 

 

 

異空間 が・・・

 

 

いや、

 

 

異次元の世界 が 

 

 

広がっていた。

 

 

 

 

 

限りなく 白に近い アイボリー

 

 

 

光の濃淡だけが

 

 

 

複雑な グラデーションを 

 

創り出している。

 

 

 

足元に走る 光のラインが

 

 

宇宙船の 滑走路 を

 

思い起こさせた。

 

 

 

遥か向こうに

 

 

四角くトリミングされた

 

蒼の世界 が見える。

 

 

 

 

 

 

 

一歩ずつ 歩みを進めるが、

 

 

 

足音は

 

床に 吸い込まれた。

 

 

 

深海の様な静けさだった。

 

 

 

 

まるで、

 

 

天国への階段?

 

 

いや、

 

 

 

天国への 回廊だ。

 

 

 

自分が前に進んでいるのか?

 

 

前方の蒼いスクリーンが 

 

拡大いているのか?

 

わからなくなる。

 

 

 

 

 

 

 

 

前方の 蒼い スクリーンに

 

 

人影が動いた。

 

 

 

 

誰かいる。

 

 

多分、

 

 

三蔵姐さん と

 

 

もう一人 は・・・

 

 

白金居士?

 

 

 

 

 

逆光が 強すぎて、

 

 

シルエット しか見えない。

 

 

 

 

いや、わかる!

 

 

 

 

あの髪型は、

 

 

 

間違いない!

 

 

三蔵姐さんだ!!

 

 

 

と、いうことは

 

 

 

隣に 立っているのは・・・

 

 

 

この人が

 

 

 

 

白金居士!?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

saiちゃん という

 

 

黒い ウサギを 追って

 

ここまで来た。

 

 

 

 

 

 

 

はたして・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ここは

 

 

出口 なのか?

 

 

 

 

それとも、

 

 

 

入口  なのか?

 

 

 

 

こから 先は

 

 

 

僕に とつて

 

 

 

マトリックス からの

 

 

 

解放 なのだろうか?

 

 

 

 

 

それとも

 

 

 

 

マトリックス への

 

 

 

侵入 なのだろうか?

 

 

 

 

 

あるいは

 

 

 

 

マトリックス の 中で

 

 

 

 

あいかわらず 

 

 

 

眠り続ける

 

 

 

僕の

 

 

夢の 続き  

 

 

 

なのだろうか?

 

 

 

 

 

 

今の   

 

 

僕には

 

 

わからない。

 

 

 

 

 

 

 

 

プラチナsai遊記 「謎解きの旅」編   

 

       完

 

 

 

 

 

 

 

最後まで読んでくださって、ありがとうございます💓