2021.2.8
年が明けて、気づけばもう2月。
withコロナが始まってとうとう1年経ちました。
今日は午前中にリモートでの授業を終え、午後から時間が出来たので、
去年制作したアルバム「birth」の楽曲解説をここに書き留めておきたいと思います。
(自分のための記憶の保存)
1,Door
数年前にlive用に作った曲。出来上がった時に
「これは魔王だな」と思いました。
「魔王」というのはゲーテの魔王。シューベルトの曲で有名。
質の問題は別として、自分の詩の視点がゲーテの詩に登場する「魔王」と同じなのでは、
と思いました。
ちょっとの間、だらだらと曲のタイトルを考えないで
「魔王」と呼んで放置していたところ
Radioheadの「Daydreaming」のPVを見つけ、
「言いたいことが同じなのでは」と感じ入るものがあり
PVからイメージを拝借し「Door」と名付けるに至りました。
レコーデイングは私があらかじめ打ち込んだビートに
生のトライアングルや壺ドラムなどのアナログ楽器をMix。
ピアノやベースはほぼliveでやっているのと同じことをやっています。
2, Birth
この世界に「生まれてくる」側の視点で描いた作品。
アルバムのアレンジはギターが決め手になりました。
エレキギターが入ることで、一気にオルタナ感が増しています。
クラシック出身の私としては遂にこういう曲が出来たか、という感慨深さがあります。
「ロックバンドやってる人たち羨まし〜」と思いながらバンドを組む仲間もおらず、
ピアノに向かうしかなかった10 代の自分が聴いたら喜ぶアレンジになっていると思います。
ギターはbassのM君がめちゃめちゃ頑張ってくれていて、
ギターが「じゅわわわわん」と入ってくるところのイメージは
これまた初期のRadioheadのオマージュのようなmixになっており
Radiohead世代真っ只中のM君の要望でこのような仕上がりになっています。
大学時代のピアノの教授はこれを聴いて「中世の教会音楽の様だね」
とおっしゃっていました。
その他、ヴァイオリンをやっている友達やクラシック音楽に関わっている人たちから、
「クラシックの影響を感じる」と言われることが多くてびっくりしています。
自分の中では
クラシックから完全に離れて、ロックやポップスをやっている意識ですが、
クラシックで身につけた感覚が意図せず影響して、
クラシックをやっている人にはその部分が伝わるんだな、と思いました。
Radioheadを聴いて育った人には、Radiohead世代感が伝わるように....。
3,Emit light
これも先に自分でビートを打ち込み、生のタンバリンやウインドチャイムetcを
後からmixしています。
ビートはヒップホップのビートを用いていますが、これは完全に
Moment Joonの影響。
私の中の(いや、Jヒップホップ界の)2020のベストアルバム、
Moment Joonの「Pasport& Garcon」
2020年最初に買ったアルバムが自分の中でヒットし良く聴いていたので、
自然にヒップホップのビートの引用に至ったところです。
(ただし私が曲にまとめるとヒップホップの要素だいぶ薄まりましたけど)
Emit light(発光)という曲イメージは決まっていましたが、
最後のバースの決め手になる詩がどうしても思い浮かばず少し放置していました。
休みの日に
クリストファー・ノーランのバットマンシリーズを3本連続で鑑賞していた時、
3部作の最後の作品「ライジング」を観ていて、
「己で上がれ」「己で光れ」の詩がバチっと浮かびました。
語数もバッチリ。言い方もちょっとヒップホップぽいし笑
バットマンありがとう。Moment Joonありがとう。
4,光の声
おなじみ卒業式ソング。
今回のアルバムにこれまでの作品と決定的に違う要素があるとすれば、
それは私の中にある「若い人たちへの眼差し」が加わっていることだろうと思います。
この要素がアルバム全体のトーンを、結果的に、暖かく優しいものにしているのだろうと、
アルバムを聴いて下さった方々からの感想を聴いて感じました。
これも意図して「暖かく」「優しく」と作っていたわけではないので、
自分にはもったいないお言葉の数々でしたが、
「暖かかった」と言われて、自分もやっとそういう人間に近づくことが出来かけているのかも、
と思うことが出来ました。
もしそうだとしたら、それは「小さな神様たち(生徒)」のお陰に他なりません。
小さな神様たちを大事に、そして感謝しながらこれからもがんばります。
5,Network
10年以上前に作った曲で、Liveの定番曲の一つです。
これまでのアルバムにはハマらず、今回やっとアルバム入りさせることが出来ました。
これまで何度かアレンジを変更してやってきましたが、今回のアルバムverが、
ある意味自分の中では完成形。
drumsのレコーディングの時に、
手違いで3小節短く曲が終わってしまっており、(気づけよ!私)
気づいたのは撤収した後。
drumsのkさんは岐阜から大阪まできてRECに参加して下さっているので
今更録り直し不可能、な状態に。
ところが3小節ズレたことで、曲の中盤のコード進行が今までと変わる形になり
それが、これまでの進行より良かったという結果が生まれ、
これまでのコード進行を変えて、今までより良い形で曲を完成させることが出来ました!
(多分誰もその変化には気づいていないと思うけど)
終わりよければ全てよし!
6,明日
アルバムを制作している途中で「そういや、あの曲も入れてみたらハマるかも」
と引っ張り出してきた昔の曲。
当時一緒にバンドに参加していただいていたdrumsとguitarのお二人に
数年ぶりにお声がけをさせて頂き、この1曲だけレコーディングに参加してもらいました。
drumsのMさん(←無口)のRECが終わり、bassとvoを入れようかというタイミングで、
Mさんが「お先に帰らせてまらいますね。本当に参加できてよかった」
と片付け始められました。
「もう帰っちゃうんですか?」と私。
そこで、少し身の上話を始められたMさん。
聞けば、仕事を辞め、家を引き払い、所有していたドラムも売って、関西を離れるとのこと。
その矢先に私からの連絡があり、
売る前のドラムセットを抱えて今回のRECに参加して下さったということでした。
ここに全てを書くことはできませんが、
完成を前に去っていったMさんが、
どこかで完成したこのアルバムを聴いて下さっているといいな、と思っています。
そしてこの仕上りに満足して下さっていればいいな、と心から思います。
7,回帰
Birthと対にになっている位置づけの曲。
「Birth」が生なら「回帰」は死を描いています。
そしてある意味、二つは一つの同じことを描いている、そんなつもりで作りました。
個人的にとても気に入っている曲で、ほとんど一人で演奏しています。
この曲には参加していないbassのM君が、
「RadioheadのKid Aみたいですね」といっていました。
改めて客観的に考えてみると、私としては80、90年代の坂本龍一の楽曲の影響を受けている!、
と感じました。
というのも私は高校生の頃、80,90年代の坂本龍一のアルバムを聴きまくていたのです。
確実にその影響がある、と思いました。
ある時、昔「キーボードマガジン」で連載されていた、
渋谷慶一郎(←あのミポリンと写真撮られたあの人)の「坂本龍一の作曲技法」という
コーナーを改めて読み返していたら、
坂本龍一の「B-2UNIT(1980年)」というアルバムと類似しているアルバムとして
Radiohead「KID A」が挙げられていて
「なるほど〜」と感心しました(何に?)
改めてbassのM君にそのことを話すと
「渋谷慶一郎、なかなかやりますね」と言っていました。
いや渋谷慶一郎すごい作曲家だから。(私もあまり詳しくないけど)
8,To you
アルバムに入れる入れない関係なく、「U2みたいな曲作ってみたいな」
というシンプルな動機で着手した曲。
曲のコード展開などは、U2の楽曲で使われてそうなパターンを使っています。
歌詞の内容はU2の楽曲から私が受け取ったイメージを、若い人たちにバトンとして渡す感じで
まとめています。
「U2みたいな曲にしたいんだよね」
と言ってデモを渡すと、bassのM君が、U2みたいなギターとベースを入れてくれました笑
これぞ「U2あるある」
いや、「U2へのオマージュ」
この「あるある感」満載のTo youはアルバムのフィジカル盤のボーナストラックに
「U2mix」として収録することに。
配信盤の方はcartonboxのI君にギターとボーカルをお願いしています。
配信盤のアレンジはニューウェーブっぽい感じを意識しているので
U2mixとは随分異なる仕上がりに。
年末のLiveのリハーサルでこの曲を試していた時、
bassのM君が「この曲、ジョン・カーニー感ありますね」と言いました。
私「ほんまやな」
ジョン・カーニーというのは
「Sing street」とか「ONCE」などの、
アイルランドを舞台にした作品を作ったアイルランドの映画監督です。
(大好き)
確かに「U2」ぽい曲を作ってニューウェーブ調を意識しながら
バンドしてたら、気分は「ジョン・カーニー」!
と、語り尽くせぬアルバム独り談義でしたが、
ここに書ききれなかったエピソードを含め、
これらの楽曲にまつわる記憶は時間とともに自分の中で薄らいでゆくもの。
一番核にあるイメージのみがアルバムとして、保存され形を残す運びです。
そして改めて、
先人たちの素晴らしい作品やイメージの数々が私を支え育んできてくれた!
そのことに心から感謝しています。
若い頃に自分の引き出しに収められていたものが、
時を経てこうして自分の作品の中で形を現してくることの
必然性にも驚きと喜びを感じています。
長くやり続けることの意味を改めて感じられるアルバム制作になりました。
読んで下さった方、アルバムを聴いて下さった方、
本当にありがとうございました。


