先月の終わりに婚姻届を提出し、黒目さんとの結婚生活を始めている。

一緒に住んでみて実感したこととしては、平日はすれ違い生活になってしまいがちだということ。

あらかじめそうなることは理解しているつもりだったが、それがどんなものか具体的には想像できていなかったようだ。

 

少し油断して退社が遅くなったり、帰宅途中にスーパーに寄ったりしたときなど、駐車場から部屋の窓を見ると電気が消えており、黒目さんがすでに就寝していることを察したときの虚しさときたら。

黒目さんは朝が早いから、こればかりはどうしようもない。

黒目さんが繁忙期に入っているときは俺と同じくらいの帰宅時間になるが、黒目さんが早く就寝の支度を終えられるよう配慮することになり、のんびりと会話をしているような時間は取りづらい。

顔合わせのとき、黒目さんのお父さんから、黒目さんの仕事について理解してやってくれといったことを言われたが、きっとこういったことを指していたのだろう。

 

家事は特に分担せず、お互い気づいたときにするようにしている。

と言っても、黒目さんにはなかなか余裕がないようで、料理や掃除など時間のかかることは大抵俺がしているんじゃないだろうか。

これについては特に不満はないのだが、俺ももう少し効率よく家事をこなすことができればいいのに、とは思う。

出勤時間が長くなった分、俺は俺でプライベートに使える時間が短くなっている。

そのプライベートも家事をこなす時間にあてられているわけだから、家事がそこまで苦になっていないことは自分でも意外だし、それがせめてもの救いと言えなくもない。

 

ごみ溜め以下の職場は人材不足が深刻化しているのか、今までの給料が安すぎたからと昇給の話を持ちかけ、今更ながら俺を引き留めようとしている。

昇給の額は聞いていないが、常識的な範囲内の額かそれ以下だろうから、改めて考えてみるまでもなくこのまま退職するのが賢明だろう。

そもそも、安すぎるという認識が本当にあるなら、最初から引き上げておけばいいものを。

転職する際はどの条件を重視すればいいか。

黒目さんとのことを思うと、なかなか理想の形が見えてこない。