兄や妹と暇な時に散歩をしていた事があった。
いつもと同じルートで、いつもと同じ景色。
会話も何を話していたかわからないほど...
その時にはそれが当たり前過ぎて、
その場の景色になど気にも止めずに将来への不安とか、
いつかの話ばかりしていた気がする。
チャリで兄弟三人で散歩した時には昔に住んでた家や街まで行っては懐かしさに浸ったっけな?
その時には"あの頃はよかったよね"みたいな話をしていた気がする。
僕の兄は今、車椅子で移動する事しかできない。
また元気になって歩けるのを信じていますが、
今までは普通に外に出て、普通に兄や妹とは、歩いたりチャリで移動できたり出来ていた事が、
もう簡単には叶わない。
だから、どれだけその日が幸せだったのかが、
今なら気付ける。
それこそ、今に不満を感じながら、過去にすがりついていながら兄弟で話していた、あの散歩していたあの瞬間のあの日が恋しくなる。
もしもあの日に戻れたら、
今の僕達なら、その目の前に広がる景色や、空や、鳥の声や、風の音に幸せを感じながら、
ひたすら今を噛み締めて過ごすのだろう。
明日は兄が退院してくる。
病院では面会がNGで、お医者さんの話を聞く時やたまに運が良い時にしか兄には会えなかった。
会えてもソーシャルリスタンス。
なので、
約5ヶ月ぶりに、兄を近くで見れて、生きてる限り側にいられる。
もしも退院した後に外出が出来たら、
きっと車椅子だとしても、身体がだるくても、
兄は僕とまた散歩できる幸せを噛み締めて、
僕も兄と散歩できる奇跡を噛み締めて、
微笑みながら、
空を見上げるんだろうな。