雨が降る中、まだ企画段階だけど、とあるドラマの打ち合わせで築地市場へ。




雨が好きだ。

子供の頃、傘を持っていても、よく雨に濡れて帰ったりしていた。

自分の中で、何か嫌なモノが洗い流されている感じが心地よかったのを覚えている。

窓に張り付いた水滴と水滴が重なり合い、下に流れていくのを見るのも好きで、よく父親の車に乗っているとき、そればかり見ていた。

大人になって、「今日は雨か」と憂鬱になる時もあるけど、基本的には雨は好き。

とくに夜明け、布団の中にいるときに雨の音が聞こえると心が落ち着く。




雨で思い出すのが、サマセット・モームの短篇。

ずばりタイトルも『雨』で、短篇小説史上最高のものの一つと呼び声の高い作品だったと思う。

雨季に見舞われた島で、断続的に雨が降りしきっていた。
そこへ宣教のために赴いた高名な宣教師が、性悪な娼婦に出会う。
宣教師は、その娼婦を改心させるのが使命だと思い、部屋で二人だけで熱心に神を説く。性悪の娼婦も徐々に耳を傾け始める。

断続的に雨が降る中、部屋で二人きりで、娼婦に必死に神を解く宣教師。
雨が上がった翌日、宣教師は部屋で自殺していた。
そして一緒の部屋にいた娼婦は叫ぶ。「人間はみんなクズだ。この宣教師もやっぱりクズだった」と。


うる覚えなので細部は違うかもしれないけど、確かこんな話だった。読んだのは20代の頃だけど、閉鎖された暑い島で、断続的に雨が降りしきり、人の理性が狂っていくさまが強烈だった……。