夏のボーナスの一部をデーモン・ナイトの小説本に費やした人は、おそらく日本中で私しかいないのではないかと思う。
たぶんきっといない。
ネット上で作品が「面白い」と一定の評判があるデーモン・ナイトの小説作品は、偶然SFアンソロジーに所収されていたなどで見かける程度が大半ではないだろうか。
しかしながら私が先月購入したのは、「ディオ」というデーモン・ナイトの短篇ばかりを集めた作品集である。
私がまだ小さい自分に発刊していたこの青心社の単行本。
表紙のイラストやデザイン、配色に至るまでその時代を何となく感じるつくりである。
以前からジッドの自伝「一粒の麦もし死なずば」をかなりのスローペースで読んでいるところではあるが、一息入れるために半ば思いつきで、このデーモン・ナイトの作品集から「目には目を……」という冒頭の作品を読んでみた。
地球に似たとある惑星の近くで起きた船内珍事で、粗相を侵した同船の異星人を罰そうとアタフタする人々と、異星人との意思疎通の齟齬についてのユーモアを交えた作品であるが、独創的ながらブラッドベリやマシスン、エリスンほどのパンチは感じられなかったのは、個人の受取り方の差かもしれない。
ただ、「大より小の方が偉大」という異星人ならではのならわしに含みを持たせたラストの場面が私には少し釈然とせず残っている。