前回に続いてヘミングウェイの「キリマンジャロの雪」である。
読み終えてみると、これまで読んだヘミングウェイの短編小説には珍しく少し読みにくいことに気付く。
何故だか考えた後、「意識の流れ」「現実」「過去」「想像の世界」が交錯しているのは分かるが、敢えて曖昧に境目を付けてないように思えてくる。
たとえば主人公の小説家ハリーの過去か、想像した自分の小説世界か曖昧模糊としている。
そして、「雪国」のような突然の場面切換に、読者は観念世界なのか現実なのか戸惑うのだが、それは決して全然わからないものではないので、読み進めれるほど望まない「死」がハリーに突如覆いかぶさる悲壮感が一層伝わって来るようだ。