言語系統をマレー・ポリネシア語とするインドネシア語に触れたことがあるならば直訳でも「orang pendek」が大まかにどんな意味か分かるであろう。


 「orang pendek=オラン・ペンデク」(私は癖があるのか“ペンデック”と発音していたが)は、短い人→小さい人→おそらくではあるが、果ては小人のことを指す言葉ではないかと思っている。


 先般、「橘外男傑作選」の蒐集についての下らない追想をした時に、こんな生物の画をご覧なられた方もいるかもしれない。


 ドン!

 実をいうと、ゴジラの生みの親である香山滋の作品集のカバーアートを拡大したものである。

 ちなみに引いて写したのものはこちら。

 写真の本のタイトルをご覧になれば、先程から私が何を言っていたのかがお気づきになろう。

 「オラン・ペンデクの復讐」というB級感強いタイトルに騙されてはならない。

 文庫で約100頁の3つに分かれた連作短編は、「秘境探検もの」のジャンルにも分類できるかもしれないが、そのスケールの壮大さたるや、種の保存・前人未到の神の領域レベルである。

 特筆すべきは、「オラン・ペンデク」の系譜についての謎と、種に交わる(自ら属す)人々についてなのであるが、序盤から高まる荒唐無稽な話の熱量のままずっと最後まで引っ張っているので、それがあたかも現実のことのように思えるというところにある。

 アニメで喩えるならば、手塚治虫の「火の鳥」シリーズをひと回り読んだような感がある。

 とにかく昔の小説家の想像力は凄いと思える作品であったので、その他の短編も徐々に追いかけて行きたいと思う。