今朝目覚めて一番に考えた本の事は、石ノ森章太郎の「人造人間キカイダー」の事だった。


 私の好きな漫画「人造人間キカイダー」は、昔母親の実家から旧いコミックの途中巻を持帰り読んだ際、痛く感銘を覚えたもので、今でも自分の好きな漫画の上位にある。

 私の中にある主役のキカイダー・ジローをはじめとした人造人間の面持ちは、決して正義のヒーローというイメージではなく、人造人間という運命を背負わされ、戦いに身を投じているという印象を残している。

 実際、序盤はヒーローもののような話にはなっているが、後半部分からは様相が変わり、人造人間であることの苦しみを、ハカイダーとの戦いを通じて描いているような感じにさえ思える。

 実際キカイダー・ジローの身体、特に顔の部分が半分ズレたようになっているのは「善悪」に葛藤するジローの「心」そのものの表れであると言われる。

 なお、漫画の最終話で、「ダーク」に洗脳された兄弟たちを皆破壊した後、ジローはあてのない放浪の度へ出てしまう。

 ジロー自身、已む無く兄弟を破壊した際、「良心回路(ジェミニィ)」が不完全にしか備わってない自分だから、兄弟を殺すことも簡単に出来てしまうと自嘲している。

 人造人間であるはずのジローの涙と「ピノキオ」の場面で締め括る最後の場面が、今でも印象的で、決して子供向けの漫画ではなく、叙情性に満ち溢れたあの漫画本はどこへ行ったものか。


 そんな石ノ森章太郎先生の青春時代を回想した1冊を所蔵していることを思い出し、整理した本棚をかき分けると、灯台もと暗し案外すぐ引き出せる場所にあるという記憶の曖昧さ。