日々の慌ただしさが増してくると、どうしても苛立つことが多くなる。


 とりわけここ最近はそのような時が多く、ごく近しい人に棘々しくなっている気がする。

気がするどころかなっている。


 私の場合、クサクサする気分を解消するのは、読書で小説の世界に没入するか或いは、お気に入りの古書を蒐めることである。


 昨日久しぶりに古本屋さんに立ち寄ってみる。

少し間が空いたので、何か1冊でも新入荷の宝は無いものかと諦め半分でいつもの棚の前を通り過ぎようとすると、ふと旧い国内SF・ジュブナイルなどが並んだ棚のことを思い出す。


 いつもであれば通り過ぎるコーナーだが、よく見ると以前何かで見て関心を抱いた福島正実のショート集があるではないか。


 もちろん相場価格であるが、いつもより少し高めなのでどうするものか思案に暮れていると、真横に「おや⁉」と思うタイトルの本が並んでいる。


 引き出して正面を見ると、殊さら関心が高まるタッチのイラストがある。



 写真はその後、私の本棚に来たあとのものであるが、どうだろうこのロマンチックなカバーイラストは。

 この時はじめている知ったのであるが、少女漫画家「鈴原研一郎」のイラスト付き詩集であった。

 裏表紙を見てみよう。
イラストとメッセージがまた叙情的である。

 「ローソクに灯をともし…」ではじまるこの5行のメッセージだけでも胸が澄み渡る気分になる。

 そして中の詩もただ単純に恋を謳うものではなく、恋をしている時、心が通じ合ったあの時を思い起こさせるような心に沁み通るものがあり、裏表紙のメッセージのようなシチュエーション(手元スタンドであるが)で読むと、一層感じられるものとなっている。

 やさしいその詩の一節一説に癒やされ、棘々した心持ちが、読んでいるといつの間にかほぐれているのである。

 ボードレール、ランボー、伊東静雄などなど好きな詩はいろいろあるが、最も疲れた心に近い距離にある詩は鈴原研一郎のイラスト付きの詩であったという新たな発見である。

 私は男性であるが、こちらはずっと手元に置いておきたい1冊である。