「黒髪」三部作の後の息継ぎとして、久しぶりに引出した海外小説がコナン・ドイルのシャーロック・ホームズの名作長編「バスカヴィル家の犬」であった。



 基本シャーロック・ホームズシリーズは読みやすいのと、推理小説特有の叙情が極力控え目になっているので、すらすらと読み進められる筈であったが、通読するのに実に一週間も掛かってしまった。


 勿論、早く読めれば良いという事でもないが、少しづつ蔵書も増えているので、自然気持ちが急いてしまうのであるが、日中でも夜であっても文字を見ていると眠気が襲って来た時はどうも対処出来ない。


 さて、この「バスカヴィル家の犬」については余りにも有名な作品であるため、コナン・ドイル初心者に近い私が今更作品について述べるまでもないのであるが、作品を推理小説寄りに読むか一種の冒険小説として読むかとなると、私は物語を愉しむ後者の方ではないかと思う。


 いわゆるトリックや動機に関していえば、ミステリー小説に熟れてしまっていると、捻りが少ないようにも思えるのであるが、事件がどうなってゆくかを見守るという視点で読み進めると一層魅力が倍加するように思える。


 そして最大の魅力は、シャーロック・ホームズの理智に長けた推察と優雅な振る舞いである。


 よく事件の難所取り組む前後に、「その前に食事にしようではないか」といった感じでホームズが語る場面を目にするのであるが、ここに事件一辺倒ではなく読者に一時の気持の余裕を与える効果があるものと私は考える。


 また、あとがきを読むと、その当時現実と架空を混同したいわゆるシャーロキンアンだろうかが、作品でホームズが住んでいたとされるベーカー街の番地何某を捜し尋ねるという逸話もあったようだ。