“開高健っていいじゃないか!”と一気に関心が高まったのは、古本屋さんでこの一冊を見ていながら、そのままにしておいて数年経った今である。



 謂わばこの本、数年間古本屋さんの棚でそのままに残っていてくれたのであるが、先般あるサイトを見ていた際に関心が高まるきっかけを得たわけで、こうして私の満載の本棚に今積まれている。

 短編集を読む際、私は大体において冒頭の一編から読むことが多いので、先ず表題の「裸の王様」を読んでみたのであるが、何とも開高健の文章はシュールで、登場人物にも最低限の呼び名しか与えてないので、感情移入無く一行一行に雑念なく吸い付けられる感じがある。

 話はある絵具商の子息を生徒に迎えた絵画教室講師を中心にしたものであるが、それぞれの人の孤独と、いかに子どもの絵画にかける想像力を、大人の都合で歪曲させているかという皮肉が、子ども絵画コンクールというものを通して感じられるようになっている。

 では「裸の王様」とはどういうことかというのも、読み終わって考えてみると、よりストンと落ちるもので、これは巧く出来たシニカルさだなと感じずにはいられない。

 そしてこちらは途中から何も無いソファーに向いて読んでいたのであるが、今更ながら気づいた事が、「周りに何も無ければ頗る読み進む」ということである。

 そして次は小島信夫の小説にバトンタッチする。