古本を好んで蒐集していると、本来本棚の用途ばかりではない多目的な棚やサイドボードの類が満ち溢れんばかりになって、ごく小さな古本屋さんの趣きを呈しはじめたここ最近であるが、今集まってこつこつと読んでいる古本の半数以上がネットの力を借りてのものであることに今更ながらに思う。


 これを定量的に見えるようにするために蔵書管理データベースを作っているのだが、あまりに物が多いので本題の読書に支障が出ると登録作業を中断してから久しい。


 ネットという便利でありながら、淡々とした事務的な商取引を幾重にも積んでていると、そのやり取りの中にも善し悪しというものが見えてくる。


 たとえば、検品中に落丁が見つかった際、直ぐ様新品準備にて対応してくれたお店もあれば、買い手の意見も聞かず、少し傷みがあっただけで勝手に注文を取り下げるお店もあった。


 以前の話になるが、芥川龍之介の作品を当時の活字で読んでみたいと思い立ち、昭和初頭頃の分厚い作品集を総合古本屋サイトから注文した後日、自宅の方にその古本屋さんが、欠品に関するお詫びの連絡を下さった。

もちろん他を当たる必要が出てきはしたが、商売人らしいきちんとした対応に、却って今度機会があれば是非利用したいと感心した程である。


 またある時などは、古本と同梱で地方住まいでは目にすることのない、神保町の古本マップを付けてくれた取引相手の方もいた。

もちろんこのマップは今でも大切に保管している。


 またあるときは、注文後こちらは希望してなかったのだが、メールで注文の品の書影を送って下さった古本屋さんもあった。


 こうやって淡々としがちインターネット上の取引においても、温もりを感じるやり取りがあるとなかなか清々しいもので、そんなことを思っているとこんな未読本を所蔵していることを思い出した。



 いずれも本好きであれば興味を惹く内容の本で、左の「昔日の客」においては、冒頭のエピソードから以前綴った「玉突屋」の作者、正宗白鳥先生のことに触れているのでいつか読んでみようと思いながら、年末にかけて別の文学大作を一つ読んでみようと目論んでいるのである。