折角の仄かに明るく静かな朝に、朝食の好物のパンとアイスコーヒーを嗜みながらノヴァーリスの「サイスの弟子たち」を読むのであるが、肩が疼いて崇高な調べのような作品の文章一つ一つが意識に入ってこない。


 これなら今は読むより書いていたほうが気が紛れるのではと、これまで読んだ作品を一つ振り返ってみる。

しかしながら、感想というほど立派なものが書ける程の技量は無く、単なる書き散らしの回想録になってしまうのである。


 佐藤正午さんといえば「月の満ち欠け」が真っ先に連想されるのであるが(ちなみに未読)、80年代に「リボルバー」という印象的な作品を書かれている。(正直、その時代から活躍されている作家さんとは知らなかった。



 この88年の文庫初版本は、いつもの古本屋さんで偶然見つけたもので、この時代を感じるカバーイラストと、作者がこの時代から活躍している人だったのだという自分の中の意外性を感じ入手したものである。

 内容は幾人かの人物がザッピング的になりながら、ある一つのことに繋がるという斬新な心理サスペンス小説である。
文体は散文とハードボイルドの中間的な面持ちがあり、エンタメ然としていないところが心地よい。

 そしてこの小説の魅力的な部分として、モームの遺した金言や文学作品の一節など、作者がきちんと文学作品を読んでいることを窺い知ることができる一節が随所にあるということである。

 これで福永武彦の「退屈な少年」が収録されている作品集「廃市・飛ぶ男」を揃えたのは、小説作品の中での出会いのひとつである。