ワーズワースの物語詩「マイケル」から半ば引き寄せられるように読んだのが、ブラッドベリの「詩」という興味深いタイトルの短編小説であった。


 この「詩」は、ヤングの「たんぽぽ娘」を冒頭に備えた集英社コバルト文庫のロマンチックSF傑作選②に収められているものの一つである。



 こちらは文庫本にも関わらず、八千円以上の高値で販売されていたものである。
他の同シリーズと較べても異様な高さである。

 それはさておき、この「詩」は流石叙情詩人といわれるブラッドベリであり、文章のあらゆる部分から、旧き良き懐かしさといった情緒を感じるものである。


 とある丘の上に住まう詩人が、ある渾身の詩を書き上げてからというもの、彼が紙上に言語化したものが喪われてゆくといったプロットで、どこかしら筒井康隆の「残像に口紅を」を彷彿とさせるものがある。
とはいえ、こちらの方が事態が大きいのであるが。

 さてこの短編を通読後、偶然先に通読した「マイケル」とのある共通性を見出した。
それはこの「詩」も、そして誰もいなくなった寂しい丘の風景が、かつてそこに誰かが生きていた事を表すかのように書かれている。

 そうどちらの話も、寂しい丘の風景に余韻を残しながら、人生の明暗を表しているのである。