レイモンの「死」を乗り越えられないコクトーの哀切を肌で心で感じるのが、三島由紀夫の「ラディゲの死」であれば、「恐るべき子供たち」は「死」をテーマとした、半ば散文的なアートのように感じる作品である。
私が通読したのはカバーなしの岩波文庫版なのだが、後にコレクター魂に火が付いて、下の写真の旺文社文庫版を手に入れている。
作品はというと、まるで一遍の詩のように耽美で怠惰な世界観で、愛ゆえに「死」に向かってゆく破滅的な少年少女の戯れを映じているため、目では読みながら、「感じる」という点で実は正直読むのに難儀した。
萩尾望都先生がこの作品を漫画化しているようだが、正にあの表紙画のような美少年、美少女をイメージしながら読むのがいいかもしれない。
しかし、おそらく「ラディゲの死」を先に肌で感じ、コクトーという人物の予備知識を得ていれば、この一種芸術品と見紛う小説に、随分感情移入できていたかもしれない。
再読の機会には、この旺文社文庫版と決めている。