今を去ること二年前の十月中旬、私は「星の王子さま」で有名な、アントワーヌ・ド・サンテグジュペリの小説「夜間飛行」を読んでいた。


 きっかけは読書会の課題作として選書されたからであり、当時コロナ感染防止で参加を見合わせていたものの、LINEで感想を持ち寄ろうと思ったからである。


 ここで課題作と表したのは、大体もう一作併録されているからであって、こちらはまだ通読に至ってない。


 会への参加は叶わないながらも、例により本の装幀だけでも一日の長を見出したい私は、安価でこちらのものを入手した。



 細かい話をすると、古めのものは裏表紙もこのカラーデザインが施され、新し目のものになるとこれが白になっている。
ちなみに私の持っているのは前者の方であるが、さして珍しいものではない。

 ついでに申し上げると、昭和初期の第一書房から発刊されたものが邦訳のはしりのようで(訳は同じく堀口大學氏)、とても味のある装幀なのだが、古本販売をついぞお目にかかることがない。

 さて、「夜間飛行」は主に、昔の航空輸送会社の幽鬼のような経営者リヴィエールについての話であるが、こんな仕事人間が上司になるとこれはこれで大変な苦労だと身が竦む思いである。

 

夜間飛行 (光文社古典新訳文庫)

 

 

夜間飛行 (まんがで読破)

 

 この経営者リヴィエール。
部下の人間関係にもメスを入れ、一人のミスに連帯責任を持たせ、死にゆく部下を前にも取り乱すことない。

 このような妥協を一切許さない恐れるべき存在は、果たしてただ恐れるだけの存在なのであろうか。答えは読んでいくと次第にわかる。

 一見すると、心のないような恐ろしい存在でありながら、その実態は企業のため己を捨て「公」に徹する強さと、身を切るような判断をしなければならないという意識の強さが表れている。

 本当に恐れる存在ではあるが、今の時代だからこそ、リヴィエールのようなリーダーが必要なのではないかとつくづく思うのである。

 部下の立場からすれば、本当に恐い存在ではあるのだが…。