これまでダラダラと、私と本についてのよもやま回想を続けてきていると、とうとう100回目まで来てしまったようだ。


 それもあって、もう少しだけ先に温めておきたかったのであるが、今回は江戸川乱歩の名作「黒蜥蜴」が私の手許に来るまでの、どうでもいいような回想を綴っておきたいと思う。


 まずこの黒基調の装幀デザインと金釘文字は、古いながらも、どこからでも見映えがするものである。



 例によって、ネットサーフィンで出くわしたこの装幀を探しに探してたどり着いたのは、いつもの「日本の古本屋」であった。
インターネットの場合、装幀の写真が無いことも多いので、出品先からの発行元や年代などの情報から手繰っていくしか無い場合もあるが、こちらもじっくり調査の上、確信を得たものである。

 ここでひとつ、古本の状態についての情報も気にするポイントで、こちらは「貸本綴じ」「ページ端欠け」など、元々の状態からの変化点についての記載があったため、私は無謀にも価格交渉に踏み切って見たのである。

 結果的に古本屋さんとの電話交渉により、1000円引きの3500円で両者合意となったわけであるが、実際手に取ってみると、ピンと張られた貸本綴じの紐部分も何だか味があっていいのである。(写真下部参照)

 こちらは裏表紙。昔の貸本屋さんのスタンプが押されている。

 見開きは映画のクレジットにも使えそうにいい味がある。


 さて、内容は言わずもがな、私の永遠ヒーロー名探偵明智小五郎vs高貴な女賊黒蜥蜴の、互いのプライドを掛けた宿命の対決で、全編旧字体で誂えられたものは、感動のラストまで一層面白さ拍車がかかる。

 しかし最も印象に残っているのは、明智小五郎が黒蜥蜴の乗っている屋形船を、自転車で追いかけるシーンである。
 あの「しまった‼」感が、何ともチャーミングなのである。