先夜のことである。

モリモトは喧噪激しい、活気溢れるデパ地下にいたのである。

美しい販売員や、忙しなく肉や魚をさばく快活な職人を横目に

モリモトはどんどん進む。

奥へと進む。

美味しそうなハムや、マグロに目を奪われながらも

どんどん進む。

奥へ奥へと。

迷いはない。

そしてついに最奥にある極上のケーキ店に辿り着くのだ。

ここで買うケーキはどれ一つ間違いがないはずだ。

ショートボブの洒落た四十路女が笑顔を振りまく。

その中から極上のチーズケーキを選ぶ。

そして場面は変わるのだ。

我が住処へ。

幸福の確信に満ちたその右手にフォークを掴み

振り下ろした瞬間!!

右肩に強烈なる抵抗を感じた。

そして気付くのである

右肩を長時間あげたまま見ていた

夢である事を。

そんなケーキ店を未だ知らない事を。